研究課題/領域番号 |
24570034
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
村井 麻理 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター生産基盤研究領域, 主任研究員 (00343971)
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研究分担者 |
石川 淳子 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター生産基盤研究領域, 主任研究員 (40343959)
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キーワード | イネ / 水分生理 / アクアポリン / 蒸散要求 |
研究概要 |
作物にとって、大気からの蒸散要求の変動に対する適応性は、土壌水分不足や塩ストレスに対する耐性機構と並んで重要な形質であるにもかかわらず、その理解は進んでいない。根から地上部への水分補給系では、細胞間水輸送系の水透過性が律速となる。本研究では、それを担うアクアポリン(水チャネル)に着目し、蒸散要求に対する根のアクアポリンの発現量の変化とそれが通水性に及ぼす影響を野外で観察し、その自然環境変動適応性を明らかにすることを目的としている。2年目にあたる平成25年度は、前年度までに整備した解析手法に基づき、水耕栽培したイネ幼植物体を用いた屋外条件での調査に着手した。イネのゲノムにコードされている33種類のアクアポリン遺伝子の分子種の内、根で発現している約17種類のアクアポリン分子種を対象にして、それぞれの遺伝子発現量をリアルタイムPCR法を用いて定量した。その結果、上記17種の中でも細胞膜型(PIP)及び液胞膜型(TIP)に属するアクアポリン分子種の多くは、発現量が夜間に少なく、晴天日では夜明け前から日中にかけて上昇し、午後から夕方にかけて減少する日周変動パターンを示すが、その振幅の大きさは分子種によって異なり、根特異性の高いアクアポリンでは振幅が大きい特徴が認められた。一方、蒸散要求量の少ない曇天及び雨天日では、日中におけるこれらアクアポリンの発現量の上昇は小さかった。また、上記17種のうち、約8種のアクアポリンについてはその発現量が前数時間のポテンシャル蒸発量(蒸散要求量)と有意な正の相関を示す事が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、前年度までに整備した解析手法に基づき、イネ幼植物体を用いて、大気からの蒸散要求量の変動がアクアポリンの発現誘導に及ぼす影響について屋外条件での調査、解析に着手し、概ね当初の予定通りに進捗した。根で発現している約17種類のアクアポリン分子種の中でも、根に特異性の高いアクアポリンでは発現量の日周変動の振幅が大きく、その変動パターンは当日の気象条件の影響を強く受けることなどの知見が得られ学会発表につながった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの屋外実験等から得られた結果の再現性を検証するため、イネにおけるアクアポリン発現量と気象条件の関係についての調査、分析を継続する。特定の気象条件に対するイネの応答を精査する必要が出て来た場合には、人工気象室を用いた栽培実験も行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額716,369円は、研究費を効率的に使用して発生した残額であり、次年度の研究費と合わせて、研究計画遂行のために使用する。 次年度使用額716,369円は、主として植物材料のサンプリング、試料調製ならびに分析のために必要な人件費謝金ならびに消耗品費として使用する予定である。
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