研究実績の概要 |
平成27年度は本研究課題の最終年度にあたる。これまでに実施した屋外実験により、イネ根で比較的多量に発現しているアクアポリン約17種類のうち、根局在型のアクアポリン(OsPIP2;5, OsTIP2;1等)の遺伝子発現量は前数時間の蒸散要求量と有意な正の相関を示すことが明らかになった。また人工気象室内の湿度と風速を調節し蒸散要求を高めた環境に置かれたイネでは根の水透過性(Lpr(os))が有意に増加することが示された。このことからイネ地上部の蒸散要求量が増加すると根で特定の遺伝子の発現量が増加し、根からの水分供給が促進される可能性が示唆された。一方、蒸散要求量とは正の相関を示さないアクアポリン遺伝子の中には、別の気象要素と有意な相関を示すものがあることがわかった。これらのアクアポリンの根の内部での局在性は、蒸散要求量と正の相関を示すアクアポリンとは異なり細胞分裂・伸長が活発な組織での発現が認められた。このことから、根では地上部への水分補給を促進する役割を担うアクアポリンの他に、根の伸長生長に関わるアクアポリンが存在する可能性が考えられ、今後の有望な研究テーマが見出された。
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