性淘汰とオスの繁殖形質の進化的関連性を野外生物において検証するため,サクラマスの国内5個体群を対象に,降海型オス成魚に対する性淘汰圧の代替指標とみなせる降海型成魚の性比(オス成魚の割合)と降海型オス成魚の体サイズおよび代表的な二次性徴(上顎長と背高)の発現程度に正の相関がみられるか調べたが,そのような関係性は認められなかった。一方,標本数が比較的多かった2個体群において上顎長に年間差が認められたことから(体サイズと背高に年間差はなし),海洋での成育条件に応じて繁殖成功への貢献度が相対的に低い二次性徴(上顎長)の発現程度を柔軟に変化させるというオスの生活史戦略の存在が示唆された。
|