研究課題/領域番号 |
24570037
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
中村 雅子 沖縄科学技術大学院大学, 海洋生態物理学ユニット, 研究員 (50580156)
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研究分担者 |
渡部 裕美 独立行政法人海洋研究開発機構, その他部局等, 研究員 (50447380)
佐々木 猛智 東京大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (70313195)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 熱水域 / 沖縄トラフ / 幼生加入 / ベントス |
研究実績の概要 |
沖縄トラフの熱水噴出域では、場所によって生物群集の多様性が大きく異なる。これらの生物群集は主に、固着性または移動能力が低いベントス(底生生物)により形成されている。それらのベントスは浮遊性である幼生期が唯一の分散可能期間であり、ベントス群集の形成•維持には新規加入幼生が大きく影響している。本研究は、「ベントス群集間で見られる多様性の差異が、新規に加入してくる幼生の種構成や量の違いに依存している」、と仮説を立て、沖縄トラフにある7つの熱水噴出域にて、新規加入幼生の種構成や加入量の空間的、時間的変異を定量化することを目指したものである。そのために、本年度は、これまでに回収した人工幼生定着基盤(以下、基盤)に付着しているベントスの形態による種同定を行った。これまで、北伊平屋海丘および鳩間海丘の各熱水地域に設置した基盤を回収している(NT13-22およびKY14-02)。基盤上の生物の形態による同定はすでに終了しており、その結果から、基盤上生物群集の主構成種は北伊平屋海丘と鳩間海丘とで異なることが明らかとなった 。ただし、種数には大きな違いが見られなかった。 今後、周辺ベントス群集構造と比較する必要がある。また、北伊平屋海丘では、統合国際深海掘削計画(IODP)による掘削事業後に形成されたベントス群集とそれ以前から存在するベントス群集とに基盤を設置しており、両地点にどのような遺伝的交流関係があるか、を調査中である。現在は、基盤上生物群集の主構成者であるキノミフネカサガイLepetodrilus nuxについて、地点間で遺伝的集団構造に違いがあるかをマイクロサテライトマーカーにより調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
沖縄トラフ内熱水域の様々な地域(南北5地域)に人工幼生定着基盤を設置するには至っているが、全ての地域から基盤を回収することができていない。これには、航海時間獲得の難しさや、航海中の海況によるところが大きい。ただし、回収できた基盤については順調に解析(種構造、サイズ構造、遺伝的集団構造など)を進めている。そういた意味で、(3)やや遅れていると(2)おおむね順調に進展しているの間くらいの達成状況といえよう。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度は、これまでに回収した基盤の解析を更に進めることを予定している。形態観察からの種同定で不確かなもの、または、それが難しい生物については、 DNAの塩基配列からの種同定を行う。また、基盤上生物群集の主な構成種、数種について、サイズ構造と遺伝的集団構造の解析を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでに設置した基盤の回収が行えなかったことや、所属していたラボに実験に必要な機器、試薬があったことがある。
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次年度使用額の使用計画 |
所属が変わり、実験機器および試薬類を新しく購入する必要があるため、平成27年度の実験を行うために必要な物品の購入に充てる予定である。
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