研究課題
本研究は、沖縄トラフの熱水域にて、新規加入幼生の種構成や加入量の空間的および時間的変化を定量化し、熱水域ベントス群集の形成や維持機構における新規加入幼生の影響を明らかにすることを目的とした。これまでに沖縄トラフにある主だった7つの熱水域のうち、4つの熱水域(北伊平屋海丘、伊良部海丘、鳩間海丘、第四与那国海丘)に人工幼生定着基盤(以下、基盤)を設置し、北伊平屋海丘と鳩間海丘から回収を行った。鳩間海丘では2回の設置および回収を行い、基盤上に新規加入したベントス群集の時間的変動を定量化した。また、北伊平屋海丘では、統合国際深海掘削計画(IODP)による掘削事業後に形成されたベントス群集と掘削以前から存在するベントス群集との間でも新規加入群集の比較調査を行った。その結果、北伊平屋海丘と鳩間海丘において、基盤上に形成されたベントス群集の種構成に大きな違いは観察されなかった。一方で、加入群集を形成する主構成種が異なることが明らかとなった。鳩間海丘では、基盤上と周辺域のベントス群集には高い類似性が見られた。これは、新規加入幼生が熱水域ベントス群集の形成や維持に大きく関わっていることを示唆するものである。さらに、北伊平屋海丘の掘削後に形成されたベントス群集とそれ以前から存在する群集では、ベントス幼生の新規加入量に大きな違いが見られ、周辺ベントス群集との関係が示唆された。また、鳩間海丘において、基盤上の新規加入群集の構造に大きな年変動は観察されなかったが、同期間、同地点内に置かれた異なる基盤間で種数に違いが見られた。今後の更なる熱水域ベントス群集の形成や維持機構における新規加入幼生の役割解明には、海丘間という広域から同地点内という局所域までの異なる空間スケールで見られるベントス幼生の加入パターンと、生物的要因や環境要因との関係を明らかにしていく必要がある。
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