研究課題
基盤研究(C)
(1)ミトコンドリアの呼吸活性比較:pect1-4植物のロゼット葉は、野生型ロゼット葉よりも全呼吸活性およびCOP活性ともに低かったので、ミトコンドリアを単離し、全呼吸活性、COP活性および AOP活性を比較した。その結果、COP活性低下は、 シトクロムオキシダーゼ遺伝子COXIIの発現レベルの低下によるのではなく、COX活性低下に起因することを、抗COXIIおよび抗AOX抗体を用いたイムノブロット解析によりあきらかにした。(2)ミトコンドリア膜脂質組成の比較:COP活性低下は、 COXII遺伝子の発現レベルの低下によるのではなく、ミトコンドリア内膜のPEレベル低下によることをあきらかにした。すなわち、野生型および変異株ともに、3週間から5週間にかけて、COXタンパク質レベルが倍増するにも関わらす、野生型では PEレベルが増加し、変異株では PEレベルが低下した。(3)蛍光染色法による植物組織の過酸化ストレスレベルの比較:pect1-4による呼吸阻害による呼吸阻害が、植物体内に過酸化ストレスを及ぼすかどうかを検証するために、過酸化水素レベルを DBA染色法で調べた。その結果、pect1-4株は野生型に較べてDBA染色の程度が高いことをあきらかにした。(4) 小胞体の油脂生合成を促進する因子 AtABCA9について国際共同研究を実施し、小胞体への脂肪酸基質輸送をその機能として提唱した。(5)種子貯蔵タンパク質の遺伝子破壊が種子中の油脂含量の増加をもたらすほかに、植物泰あたりの種子数の増加をもたらすことをあきらかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
(1) pect1-4植物ではリン脂質ホスファチジルエタノールアミンの生合成が低下することにより、葉の生長に伴う呼吸活性の上昇(シトクロムオキシダーゼ遺伝子の発現増強)を補うことができず、呼吸活性の低下をもたらすことをあきらかにした。この成果は現在、論文投稿中である。(2) 小胞体での油脂合成を促進する因子 AtABCA9について、国際共同研究を実施し、 PNAS誌に論文発表している。(3)次年度以降、低温成長に対する pect1-4の効果を検証するにおいて、呼吸活性の維持が重要な視点であることをあきらかにしている。(4) pect1-4植物と野生型植物とで、予備的なマイクロアレー解析データを入手しており、今後は、多様な表現型を示す pect1-4 の原因をゲノムワイドな遺伝子発現と関連づけて研究する準備が整った。(5)シロイヌナズナの種子貯蔵タンパク質の遺伝子破壊が、種子中の油脂含量の増加とともに、植物個体あたりの種子数の増大をもたらすことをあきらかにした。この結果を受け、 pect1-4植物の種子の油脂含量についても解析を行うことが期待される。
(1) pect1-4植物の呼吸鎖複合体タンパク質を調製し、 Blue Native Pageにより高次構造に対する PE欠乏の影響を評価する。(2)低温成長に対する pect1-4の効果を検証するにおいて、 COXおよびAOX呼吸活性の低下に注目して研究を進める。(3) pect1-4植物と野生型植物との比較から得られた、予備的なマイクロアレー解析データを用いて、入手しており、今後は、多面的表現型を示す pect1-4 の原因をゲノムワイドな遺伝子発現と関連づけて研究する準備が整った。特に、大きな変動を示す転写因子とプロテインキナーゼ、プロテインホスファターゼについて重点的に解析したい。(4)シロイヌナズナの根のミトコンドリア形態は、 PECT1活性の低下とともにどのような変動を示すのかを、 GFPで可視化したミトコンドリア形質転換植物を用いて解析する。また、ロゼット葉の成長(短日3週間以降)とともに、ミトコンドリア形態がどのように変化するかを解析する。さらに、必要ならば、電子顕微鏡を用いて、ミトコンドリアの微細形態を観察する。
(1) pect1-4植物の呼吸鎖複合体タンパク質を調製し、 Blue Native Pageにより高次構造を解析するための経費(2)pect1-4植物と野生型植物との比較から得られた、予備的なマイクロアレー解析データを用いて、 多面的表現型を示す pect1-4 のゲノムワイドな遺伝子発現変化を RT-PCR法で解析する経費(3)植物生理学会(富山大学)に参加し、研究発表する経費。(4)韓国で12月に行われる第5回アジア植物脂質シンポジウムに参加し、発表する経費(5)現在投稿中の pect1-4と呼吸活性に関する論文の掲載料等が主な研究費の使途である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Proc. Natl. Sci. Acad. USA
巻: 110 ページ: 773-778
doi:10.1073/pnas.1214159110
Plant Biotech.
巻: 000
http://www.molbiol.saitama-u.ac.jp/~nishida/Nishida_Lab/Pub56.html