研究課題
1.ミトコンドリアの呼吸活性比較:pect1-4植物のロゼット葉は、野生型ロゼット葉よりも全呼吸活性およびCOP活性ともに低かった。単離ミトコンドリアでは、全呼吸活性およびCOP活性がpect1-4株で低下したが、 AOP活性は野生型と同レベルであった。抗COXIIを用いたイムノブロット解析によりCOP活性低下は、シトクロムオキシダーゼ遺伝子COXIIの発現レベルの低下によるのではなく、COX活性低下に起因した。このCOP活性低下は、ミトコンドリア内膜のPEレベル低下とパラレルであった。すなわち、野生型および変異株ともに、3週間から5週間にかけて、COXタンパク質レベルが倍増するにも関わらす、野生型では PEレベルが増加し、変異株では PEレベルが低下した。以上をOtsuru et al. (2013) PCP誌に発表した。2.pect1-4株は野生型に較べ、長日条件で早期花成を示すことをあきらかにした。RT-PCRによる遺伝子発現解析から、花成制御経路のうち、自律経路/春化経路を支配するFLCの発現レベルが低下することをあきらかにした。FLCの発現調節を司る既知の上流因子について、RT-PCRにより発現レベルを検証したが、発現レベルが野生型と著しく異なる遺伝子は見つからなかった。3.pect1-4株は野生型に較べ、短日条件でも早期花成を示すことをあきらかにした。このとき、側芽の形成葉が変異株で著しく発達することがわかった。4.シロイヌナズナの貯蔵タンパク質crcの破壊が種子の油脂含量と植物体あたりの種子生産量を増大させることを受け、cra1 crb crc三重変異株でも同様の結果を得た。
2: おおむね順調に進展している
1.pect1-4植物ではリン脂質ホスファチジルエタノールアミンの生合成が低下することにより、葉の生長に伴う呼吸活性の上昇(シトクロムオキシダーゼ遺伝子の発現増強)を補うことができず、呼吸活性の低下をもたらすことをあきらかにした。この成果を論文発表できた。、2.新規の知見として、pect1-4植物の早期花成表現型を明らかにし、花成遺伝子に対する影響を評価した。3.シロイヌナズナの貯蔵タンパク質crcの破壊が種子の油脂含量と植物体あたりの種子生産量を増大させることを受け、cra1 crb crc三重変異株でも同様の結果を得た。
1.pect1-4植物の呼吸鎖複合体タンパク質を調製し、 Blue Native Pageにより高次構造に対する PE欠乏の影響を評価する。2.低温成長に対する pect1-4の効果を検証するにおいて、 COXおよびAOX呼吸活性の低下に注目して研究を進める。3.pect1-4植物の早期花成のげんいんについて、さらに研究を進める。4.シロイヌナズナの根のミトコンドリア形態は、 PECT1活性の低下とともにどのような変動を示すのかを、 GFPで可視化したミトコンドリア形質転換植物を用いて解析する。また、ロゼット葉の成長(短日3週間以降)とともに、ミトコンドリア形態がどのように変化するかを解析する。さらに、必要ならば、電子顕微鏡を用いて、ミトコンドリアの微細形態を観察する。5.シロイヌナズナの貯蔵タンパク質三重変異株cra1 crb crcで種子の油脂含量と植物体あたりの種子生産量の増化を確認したので、さらに油脂合成を強化し、油脂生産に対する影響を評価する。また、pect1-4株およびPECT1発現強化株について、油脂生産に対する影響を評価する。6.pect1-4に関する新たな表現型について、新たな共同研究を開始する。
pect1-4について、呼吸活性の低下以外に、早期花成など新たな表現型が見つかってきたため、これらの研究をH26年度に実施するため、研究経費の一部を繰り越した。また、7月にカナダ・トロントで行われる国際植物脂質シンポジウム2014に出席し、研究成果を発表する。pect1-4の新たな表現型を解析するため、研究経費を使用する。また、国際植物脂質シンポジウム2014に出席し、研究成果を発表するための旅費とする。
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Plant Cell Physiology
巻: 54 ページ: 1612-1619
10.1093/pcp/pct104
PLOS one
巻: 8 ページ: e81978
10.1371/journal.pone.0081978
http://www.molbiol.saitama-u.ac.jp/~nishida/Nishida_Lab/Publication.html