研究課題
本研究では可塑的な葉緑体分化の分子機構の解明を目的としている。非光合成器官・組織の色素体は潜在的に光合成を行なう葉緑体に分化する能力を維持しているが、通常の生育条件での葉緑体分化は抑制されている。この可塑的な葉緑体分化の制御機構を解明できれば、葉緑体分化ならびに光合成光化学系構築の分子機構を明らかにできるだけでなく、シンク器官を非光合成器官をソース器官に変換することで、光合成生産効率を向上した作物の育種に繋がることが期待できる。本研究ではシロイヌナズナの根をモデルとして、可塑的な葉緑体分化のメカニズムの解明に取り組む。今年度は4つの研究課題(1. 葉緑体分化抑制機構の解明、2. 葉緑体分化に関わる転写因子の同定・遺伝子導入、3. 葉緑体分化に伴う光合成能力の評価、4. 非光合成組織における特異的発現プロモーター系の開発と生育環境の最適化)のうち、1, 2, 3について主に取り組んだ。1.については、葉緑体チラコイド膜形成に伴う葉緑体遺伝子の発現誘導機構について解析を行ない、その業績がPlant Journal誌に掲載された。2.については、緑化される根で誘導される転写因子をリスト化し、複数の転写因子を同時に植物細胞内で発現誘導することが可能なPRESSO systemを用いた発現系を構築している段階である。また3. については、緑化誘導したシロイヌナズナの根における光合成能力を詳細に解析した論文がPlant Cell Physiology誌に掲載された。またセイヨウタンポポとシロイヌナズナの根において、地上部切除により誘導される葉緑体分化および光合成能力の評価について解析を行なった。この結果は先の1.の結果と合わせて論文を投稿準備中である。今年度は2. の研究課題を中心に進展させながら、残る4.の課題にも取り組んでいきたいと考えている。
2: おおむね順調に進展している
研究は概ね順調に進展している。今年度、研究課題の1.がPlant Journal誌に掲載され、また研究課題の3.がPlant Cell Physiology誌に掲載された。また研究課題1.および3.についての論文を現在投稿準備中である。また研究課題2.についても順調に進展している段階である。
当初の計画通り遂行していく予定であるが、研究課題3.の進展が重要になってきたため、研究課題4.よりも優先度を上げて取り組んでいく予定である。
実験計画の変更のため。前年度未使用額については、今年度10月までに使用する予定。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Plant Journal
巻: 73 ページ: 250-261
10.1111/tpj.12028
Plant Cell Physiology
巻: 54 ページ: 1365-1377
10.1093/pcp/pct086
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/masuda_lab/Masuda_Laboratory/Welcome.html