研究概要 |
本研究は,生物の「生物らしさ」の本質を理解するため,創発的な現象の代表例として,シアノバクテリアのフィラメントが集団で形 成する2次元・3次元の構造形成に関わる遺伝子の解明とともに,運動の力学的解析を通じて,構造形成の数理的な解明を目指している 。 本年度は,<i>Phormidium</i> sp. strain KSのゲノム解析を中心に行った。昨年度に454によって得たリードのアセンブル結果を元に,scaffold間をPCRで増幅し,Sanger法によるシーケンスによって接続する作業を繰り返した。その結果,5.2 Mbpのメインゲノム,0.5 Mbp,0.25 Mbp, 87 kbp, 32 kbp, 14 kbpの環状プラスミドの配列を得た。さらにIllumina MySeqによる150塩基長ペアエンドの5000万リードを得て,これについてvelvetを用いてアセンブルを行い,平均カバレッジ26程度のコンティグを得た。今後は,これら両者を会わせて,配列の補正を行い,最終的な塩基配列を完成する。さらに,遺伝子の推定とアノテーションを行う。 なお,今の段階で,運動に関わる遺伝子として,Type IV piliに関わる遺伝子を同定した。 これに加えて,電子顕微鏡による観察を行い,このシアノバクテリアは,薄いディスク上の細胞が多数積み重なって,一つのフィラメントを構成していること,細胞の外側には,多糖類と思われる繊維状のものでできたさや状構造体が形成され,細胞が移動したあとには,さやが残されることなどを確認した。 今後は,これらの情報を総合して,細胞運動によるマクロな構造形成のしくみを解明する。
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