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2012 年度 実施状況報告書

植物のダイサーの酵素活性と機能分化

研究課題

研究課題/領域番号 24570044
研究種目

基盤研究(C)

研究機関東京農工大学

研究代表者

福原 敏行  東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90228924)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードRNA干渉 / ダイサー / シロイヌナズナ / DCL3 / DCL4
研究概要

植物には、4種類のダイサーが存在し、遺伝子発現制御、エピジェネティック制御、ウイルス感染防御など多くの重要な生体反応に関わっている。本研究では、4種類のダイサーの中でもRNA依存DNAメチル化(RdDM)に関与するDCL3とmRNAの切断(RNA干渉)に関与するDCL4の酵素活性および小分子RNAの生成機構を解析し、ダイサーの機能分化を明らかにすることを目的とした。
モデル植物シロイヌナズナの芽生え由来の粗抽出液を酵素画分、30, 37, 50, 500塩基対の2本鎖RNAを基質として反応をおこない解析したところ、24塩基および21塩基の小分子RNAの生成を確認した。DCL3変異体およびDCL4変異体由来の粗抽出液を用いた解析から、DCL3およびDCL4がそれぞれ24塩基および21塩基の小分子RNAを生成したことを確認した。このように、植物の生体防御に中心的な役割を果たすと考えられる2種類のダイサー(DCL3, DCL4)の活性を簡便に検出することに成功した。また、DCL3は30-50塩基の短い2本鎖RNAを好んで切断するが、DCL4は50塩基以上の長い2本鎖RNAを好んで切断することがわかった。
さらに、種々の反応条件で、ダイサー活性を測定したところ、ダイサー活性には、ATPやMgイオンが必要であることなど、ヒトやショウジョウバエのダイサーで知られている特性と同じであった。一方、種々の塩(NaCl)濃度でダイサー活性を測定したところ、DCL3は約150 mMの塩濃度に至適塩濃度があるのに対し、DCL4では塩により活性が阻害されることがわかった。このように、生体内で機能が異なる2種類のダイサー(DCL3とDCL4)は、基質の認識機構や至適塩濃度などが異なることで機能分化していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初は、生体内で24塩基のsmall interfering RNA (siRNA)の生成を担い、RNA依存DNAメチル化(RdDM)に関与するDCL3の活性を詳細に検討することが容易ではないと予想したが、短い2本鎖RNAを基質に用いることでDCL3の活性を簡便かつ高感度で検出し、生化学的に詳細に解析することが可能となった。その結果、既に活性を検出していたDCL4の活性とDCL3の活性を生化学的に比較解析することができた。
DCL3は30-50塩基の短い2本鎖RNAを好んで切断するが、DCL4は50塩基以上の長い2本鎖RNAを好んで切断すること、DCL3の至適塩濃度は約150 mMであるのに対し、DCL4は塩により活性が阻害されること、DCL3は、3’末端が1塩基突出した2本鎖RNAを好んで切断するが、DCL4は、平滑末端、3’末端1塩基もしくは2塩基突出の基質に対して同等の活性を有すること等がわかった。このように、生体内で機能が異なる2種類のダイサー(DCL3とDCL4)は、基質認識機構や至適塩濃度などが異なることで機能分化していることが示唆された。
研究開始1年目で、DCL3とDCL4の基質の認識機構や至適塩濃度について興味深い結果を得ることができ、これら2種類のダイサーの生体内での機能分化(RNA依存DNAメチル化とRNA干渉)は、2種類のダイサーの基質認識機構の違いが原因であることが示唆されたことは予想以上の大きな進展である。

今後の研究の推進方策

1年目の研究成果として生化学的 (in vitro) な手法で明らかにした2種類のダイサー(DCL3とDCL4)の基質認識機構が、生体内(in vivo) においても適用できるかどうかを確認する研究を推進する。さらにDCL3およびDCL4により生成されsiRNAがDNAのメチル化(RNA依存DNAメチル化)およびmRNAの切断(RNA干渉)を生体内で誘導できるかどうかを解析する研究を推進する。
具体的には、シロイヌナズナからプロトプラストを調製し、人工的に合成した種々の2本鎖RNAをプロトプラスト(細胞)に導入し、その後のダイサー活性による切断産物(siRNA)と誘導される生体防御反応(DNAのメチル化もしくはmRNAの切断)を解析する。導入した基質・2本鎖RNAの構造と生成したsiRNAのサイズや誘導される生体防御反応の関係を明らかにし、試験管内の実験系(in vitro)の研究成果と生体内での実験系(in vivo)の研究成果を総合的に解析することによって、DCL3とDCL4の酵素活性と機能分化(RNA依存DNAメチル化とRNA干渉)の関係について明らかにする。
また、DCL1, DCL2の酵素活性を検出する実験系の確立を目指し、DCL3とDCL4の活性と比較解析することを目標に研究を進める。

次年度の研究費の使用計画

本年度の所要額(1,820,000円)と実支出額(1,733,143円)の差額(86,857円)は、次年度の物品費に繰り入れて適正に支出する計画である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Molecular characterization of two evolutionally distinct endornaviruses co-infecting common bean (Phaseolus vulgaris).2013

    • 著者名/発表者名
      Okada R, Yong CK, Valverde RA, Sabanadzovic S, Aoki N, Hotate S, Kiyota E, Moriyama H and Fukuhara T
    • 雑誌名

      Journal of General Virology

      巻: 94 ページ: 220-229

    • DOI

      10.1099/vir.0.044487-0

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Characterization of Magnaporthe oryzae chrysovirus 1 structural proteins and their expression in Saccharomyces cerevisiae.2012

    • 著者名/発表者名
      Urayama S, Ohta T, Onozuka N, Sakoda H, Fukuhara T, Arie T, Teraoka T and Moriyama H
    • 雑誌名

      Journal of Virology

      巻: 86 ページ: 8287-8295

    • DOI

      10.1128/JVI.00871-12

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The Novel Kasugamycin 2' -N-Acetyltransferase Gene, aac(2' )-IIa, Encoded by the IncP Island Confers Kasugamycin Resistance to Rice Pathogenic Bacteria.2012

    • 著者名/発表者名
      Yoshii A, Moriyama H and Fukuhara T
    • 雑誌名

      Applied and Environmental Microbiology

      巻: 78 ページ: 5555-5564

    • DOI

      10.1128/AEM.01155-12

    • 査読あり
  • [学会発表] シロイヌナズナのダイサーDCL3およびDCL4の基質認識機構の解明2013

    • 著者名/発表者名
      長野秀昭, 福留章仁, 中澤悠宏, 平栗章弘, 森山裕充, 福原敏行
    • 学会等名
      第54回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      20130321-20130323
  • [学会発表] Biochemical characterization of Dicer-like 3 in Arabidopsis thaliana.2012

    • 著者名/発表者名
      Hideaki Nagano, Akihito Fukudome, Akihiro Hiraguri, Hiromitsu Moriyama and Toshiyuki Fukuhara
    • 学会等名
      COLD SPRING HARBOR ASIA meeting: Plant Epigenetics, Stress and Evolution.
    • 発表場所
      Suzhou, China
    • 年月日
      20121029-20121102
  • [学会発表] Characterization of enzymatic properties of Arabidopsis DCL3 and DCL4.2012

    • 著者名/発表者名
      Hideaki Nagano, Akihito Fukudome, Yukihiro Nakazawa, Akihiro Hiraguri, Hiromitsu Moriyama and Toshiyuki Fukuhara
    • 学会等名
      10th International Plant Molecular Biology Congress
    • 発表場所
      Jeju, Korea
    • 年月日
      20121021-20121026
  • [学会発表] DsRNA-cleaving activities of DCL3 and DCL4 in Arabidopsis thaliana2012

    • 著者名/発表者名
      Hideaki Nagano, Akihito Fukudome, Akihiro Hiraguri, Hiromitsu Moriyama and Toshiyuki Fukuhara
    • 学会等名
      International Plant RNA symposium: Frontiers in Plant RNA Research 2012
    • 発表場所
      北海道大学
    • 年月日
      20121016-20121017
    • 招待講演
  • [学会発表] シロイヌナズナのダイサーDCL3の2本鎖RNA切断活性の解析2012

    • 著者名/発表者名
      長野秀昭, 福留章仁, 中澤悠宏, 平栗章弘, 森山裕充, 福原敏行
    • 学会等名
      日本植物学会第76回大会
    • 発表場所
      兵庫県立大学
    • 年月日
      20120915-20120917
  • [学会発表] シロイヌナズナのダイサーDCL3およびDCL4の酵素活性の比較2012

    • 著者名/発表者名
      長野秀昭、福留章仁、中澤悠宏、平栗章弘、森山裕充、福原敏行
    • 学会等名
      第14回日本RNA学会年会
    • 発表場所
      東北大学
    • 年月日
      20120718-20120720
  • [備考] 東京農工大学細胞分子生物学研究室

    • URL

      http://www.tuat.ac.jp/~mcb/

  • [備考] 植物RNA研究ネットワーク

    • URL

      http://iwd.xsrv.jp/rna/index.html

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公開日: 2014-07-24  

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