研究課題/領域番号 |
24570046
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
望月 伸悦 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60280939)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プラスチドシグナル / ストレス応答 / 遺伝子発現 / 環境応答 |
研究実績の概要 |
プラスチドは光合成や物質代謝の場であるばかりでなく、外部環境刺激(低温・乾燥・病害)や、自身の分化・機能状態に応じて、核における遺伝子発現を調節するなど、細胞全体の機能を調節している。本研究は、このようなプラスチドから細胞(核)へのシグナル、いわゆる逆行シグナル(プラスチドシグナル)情報伝達系について、アラビドプシス、ゼニゴケを材料として解析を進めた。 これまでに、FOXハンティングシステムを用い、プラスチドシグナルに異常を示す過剰発現型変異体(gun ox)を多数単離した。そのなかで、bZIP型転写因子GBF1や、LOV-Fbox-kelch構造をもち概日時計や花成時期の制御で働くLKP2、さらにストレス応答やTORシグナルに関与するTCTP遺伝子が得られた。既知のプラスチドシグナル伝達系gun変異体との二重変異体の解析から、GBF1oxとGUN1およびGUN5の間で遺伝学的相互作用が観察された。TCTPoxとgunの間では、遺伝学的相互作用が見られなかった。LKP2とCCA1oxについては、二重変異体の作製が遅れており、今年度内に解析ができなかった。別のアプローチとして、gun変異体が概日時計に異常を示す可能性を考え、表現型の詳細な解析を進めている。 ゼニゴケを材料とした解析については、プラスチド機能を損ねる薬剤処理によって、細胞核の遺伝子発現が抑制されることを確認した。また、種子植物と同様にGUN遺伝子がシグナリングに機能するか明らかにするため、GUN1およびGUN5遺伝子のKO株作製を進めた。その結果、予備的実験ではgun1ノックアウト株ではプラスチドシグナル伝達が正常に機能することが分かった。GUN5 はクロロフィル合成に必須の遺伝子であるため、通常の方法では遺伝子破壊ができないことがわかり、誘導型RNAiコンストラクトの作製を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目的とした、過剰発現体と既存のgun変異体の遺伝学的解析はおおむね順調に進んだ。ゼニゴケのGUN1とGUN5 ノックアウト株取得は、前者については完了したが、GUN5は致死となるため得られていない。RNAiライン作製は進めているため、来年度の繰り越し期間中に結果が得られる見込みである。これらの状況を総合して、当初の研究計画がおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
アラビドプシスを用いた研究では、GUN1から転写因子ABI4(GLK,GBF1)へのシグナル伝達が重要な経路の一つであるため、TCTPやLKP2がこれらの因子の細胞質や核における働きに関与する可能性が考えられる。また、TCTPはプラスチドに由来するシグナル分子の候補であるテトラピロール分子と相互作用することが示されていることから、TCTPがシグナル分子を認識する分子機構について検討する必要がある。また、gun5変異体とTCTP過剰発現体は共に孔辺細胞における開度調節に異常を示すことが報告されているため、孔辺細胞における働きを詳細に解析する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に、植物形質転換体を作製し、表現型の解析を行う予定だったが、栽培装置の故障によって予定の期日に形質転換体を得ることが出来ず、新たに形質転換体が得られるのは平成27年4月以降である。また、変異株を掛け合わせるとで二重変異体の作出を行っているが、第一回目の実験では掛け合わせ体が得られなかったため、追加実験が必要となった。したがって、表現型の解析(分子生物学的、組成分析)を次年度中に行う必要があり、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
上記のように、得られた形質転換体の分子生物学的解析および組成分析を次年度に行う事とし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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