研究課題
シロイヌナズナVAH遺伝子が幹細胞らしさの解除に関わることを明らかにしている。VAHは、幹細胞らしさの付与に関わるWOXファミリー遺伝子の発現を負に制御する。VAHの機能解析から、幹細胞らしさの解除の分子機構に迫るべく、研究を進めている。1)VAHタンパク質複合体の構成因子の候補を同定した。VAHと物理的に相互作用するものとして、動物などでクロマチンリモデリングに関わることが示されているタンパク質因子を同定した。また、同クロマチンリモデリング因子は、転写に関わる他の因子と物理的に相互作用することが動物などで知られていた。そこで、シロイヌナズナの同転写因子と同クロマチンリモデリング因子との物理的相互作用を解析した。その結果、これら因子は物理的に相互作用しうることを確認した。以上から、VAHは、このクロマチンリモデリング因子を介して、転写に関わる因子と相互作用することが示唆された。2)VAH遺伝子と上記転写因子をコードする遺伝子との二重変異体では、WOX遺伝子の発現に関する表現型が昂進されていた。vah変異体単独では、発現上昇の確認できなかったWOX遺伝子についても発現上昇が確認された。これらから、VAHが同転写因子と共に、WOX遺伝子の発現を負に制御していることを示唆された。3)VAHタンパク質と物理的に相互作用する別のタンパク質因子を同定し、同因子もWOX遺伝子の負の発現制御に関わっていることを見出した。4)vah変異体で見られる根端の異常が、vah wox多重変異体で部分的に抑制されることを見出した。同WOX遺伝子は、vah変異体では異所的に発現上昇していることもすでに明らかにしている。これらから、VAH遺伝子は、WOX遺伝子を負に調節することにより、根の発生の調節を行っていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
現在までに、VAHと共に働く複数の因子の同定に成功しており、順調に研究が進んでいる。VAHだけでなく、これらVAHと共に働く候補因子は、植物の発生過程に関わるものとしては、これまでほとんど解析されていない。そもそも植物幹細胞の幹細胞らしさの解除についての知見はほとんど報告されていない。本研究を、これまでの成果を基盤として進めることにより、植物発生の基本機構に関する新規な知見が得られると期待される。
これまでの研究から、VAHと共に働く因子の候補を複数同定し、VAHが転写の調節に関わることが示唆されている。これらを踏まえ、以下の解析を進める。1)VAHと相互作用する因子を網羅的に同定するため、VAHタンパク質複合体を精製し、構成因子を同定する。2)VAHによる発現制御を受ける遺伝子を網羅的に同定するため、vah変異体やvahとの多重変異体を用いてトランスクリプトーム解析を行う。3)VAHによる転写制御機構を明らかにするため、VAHと共に働く転写因子に対する特異抗体を用いて、同転写因子のゲノム結合の様子を解析する。vah変異体などでは、同転写因子のゲノムへの結合に異常が見られる可能性がある。
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PLOS Genetics
巻: 9 ページ: e1003655
doi:10.1371/journal.pgen.1003655.
http://www.bot.kyoto-u.ac.jp/annual/5_iden.html