研究課題
1)シロイヌナズナVAH遺伝子が幹細胞らしさの解除に関わることを明らかにしている。VAHの機能解析から、幹細胞らしさの解除の分子機構に迫るべく、研究を進めている。VAHと共に働くと考えられるタンパク質因子を同定した。同タンパク質因子をコードする遺伝子とVAHとの二重機能欠損変異体では、WOX発現上昇の昂進だけではなく、帯化やメリステムの肥大化などのclavataと似た形態的表現型も見られた。これらはVAHと同タンパク質因子が共に働いて、幹細胞らしさの付与に関わるWOXの発現を負に制御していることを示唆した。2)CUV遺伝子は、パン酵母からヒト、植物に広く保存されているスプライシング因子Prp16オーソログをコードする。CUVが、オーキシン生合成や極性輸送、受容、応答に関わる遺伝子の発現を遺伝子特異的、組織特異的に促すこと、オーキシンを介した発生を支えていることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
現在までに、VAHと共に働く複数の因子の同定に成功しており、順調に研究が進んでいる。VAHだけでなく、これらVAHと共に働く候補因子は、植物の発生過程に関わるものとしては、これまでほとんど解析されていない。そもそも植物幹細胞の幹細胞らしさの解除についての知見はほとんど報告されていない。本研究を進めることにより、植物発生の基本機構に関する新規な知見が得られると期待される。
これまでの研究から、VAHと共に働く因子の候補を複数同定し、VAHが転写の調節に関わることが示唆されている。これらを踏まえ、以下の解析を進める。1)VAHと相互作用する因子を網羅的に同定するため、VAHタンパク質複合体を精製し、構成因子を同定する。2)VAHによる転写制御機構を明らかにするため、VAHと共に働く転写因子に対する特異抗体を用いて、同転写因子のゲノム結合の様子を解析する。vah変異体などでは、同転写因子のゲノムへの結合に異常が見られる可能性がある。
平成26年度に、植物細胞の分化制御におけるCUVとVAHの役割についての解析を行い、その結果を学会等で発表する予定であったが、更なる機能解析の結果、これら因子がオーキシン、WOX/CLV系と関係があることが判明し、計画を変更して、CUV、VAHの解析をオーキシン、WOX/CLV系の観点から行うこととしたため、未使用額が生じた。
このため、次年度に、植物細胞の分化制御におけるCUV、VAH、オーキシン、WOX/CLV系の解析を行い、その結果を学会や論文で発表することとし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
すべて 2015 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 備考 (1件)
The Plant Journal
巻: 81 ページ: 183-197
doi: 10.1111/tpj.12721
http://www.bot.kyoto-u.ac.jp/annual/5_iden.html