研究課題
今年度は、ゼニゴケの再生過程で起こる細胞分裂制御における光の役割について進展があった。コケ植物の高い再生能が、光に大きく依存することが古くから知られていたが、その分子的背景は不明であった。葉状体の頂端部を切除すると、基部側の切断片中肋付近の頂端側かつ腹側の細胞がまず分裂を開始する。このときG1期で停止していた細胞がS期に進入することで細胞周期が再開することがわかった。切断後のS期進入は赤色光により促進され、遠赤色光により抑制された。また培地に糖を加えることで、光条件に関係なくS期進入が促進された。つまり赤色光は、フィトクロムによるシグナリングと光合成の活性化によって、協調的に細胞周期再開を促進することが示唆された。さらに細胞形態の観察から、赤色光はフィトクロムを介して細胞の等方性成長を促進することがわかった。発芽した胞子の発生においても同様の光制御機構を見出した。これらについてJ. Plant Res.誌に報告した。前年度に得られた、ゼニゴケ細胞質分裂キネシンNACKのノックアウト(KO)相補株nack-KO/proNACK:Citrine-NACKを野生型と交配して得られた胞子について、発芽後の表現型を解析した。約1/4の発芽胞子において細胞が巨大化し、それらは複数の核と不完全細胞板を含んでいたことから、nack-KO単独変異体細胞は細胞質分裂に欠損を示すことが示唆された。さらに交配ではなく、誘導的にnack-KO株を作出できるように、Cre/loxP部位特異的組換え系をゼニゴケの高温誘導性プロモーターおよびglucocorticoid receptorと組み合わせることで、高温と薬剤処理により、漏れが少なくかつ効率的に外来遺伝子を欠失させる手法を開発した(論文投稿中)。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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