研究課題/領域番号 |
24570049
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
酒井 敦 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (30235098)
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キーワード | 接触形態形成 / 窒素 / 光合成 / 踏圧 / 機械的刺激 / ストレス耐性 / 生活型 |
研究概要 |
平成25年度はノシバを主要な材料として用い、栄養環境を様々に変えて踏圧処理の有無に応じた植物体サイズ、窒素含量、光合成能力の変化を調査し、想定した「機械的刺激>小型化>窒素含量の増大>光合成能力の増大」という連鎖的反応が起こるか検討した。その結果、ノシバでは貧栄養から冨栄養まで幅広い栄養環境下において連鎖的反応がおこることを確認した。 また、前年度は連鎖的反応が見られなかったバヒアグラスにおいて踏圧処理に応じた光合成能力の向上が認められた。また、シロイヌナズナを用いて機械的刺激の頻度を変更した結果、やはり極めて低い頻度範囲でのみ連鎖的反応が成立する可能性が示された。機械的刺激に対する耐性が比較的低い植物種においては、連鎖的反応が成立するか否かは極めて微妙であると考えられる。 さらに、非栽培環境下において機械的刺激の有無・強度に応じたサイズ変化を生じていると思われる植物材料を探索し8種について調査を行った結果、5種(チドメグサ、シロツメクサ、ギョウギシバ、ドクダミ、ヤブヘビイチゴ)については連鎖的反応が成立し3種類(オッタチカタバミ、コウマゴヤシ、カラスノエンドウ)については成立しないことが判明した。ギョウギシバとシロツメクサを用いた栽培実験では、小型化と大型化の両方向について連鎖的反応の成立が認められた。 これまでの結果を見る限り、多年生で匍匐茎または地下茎で広がるタイプの植物において連鎖的反応が顕著にみられる傾向が強く、機械的刺激耐性の高低とともに生活型の違いも連鎖的反応成立の有無に大きく影響する可能性がある。一・越年生で機械的刺激に対する耐性の低い植物種では、連鎖的反応が成立しないか、成立しても極めて狭い条件範囲に限定されるようである。今後、より多くの植物種について、生活型、ストレス耐性の程度と連鎖的反応成立の条件を検討し、その理由を考察する必要があるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、環境要因が連鎖反応に及ぼす影響についてはシロイヌナズナを用いる予定であったが、連鎖的反応が成立する範囲が極めて限定的であるため、安定して連鎖的反応を観察できるノシバを主材料に用いている。ノシバの育成には時間とスペースが必要なため、平成25年度には栄養環境の違いが連鎖的反応に及ぼす影響に絞って調査を行った。その他はほぼ予定通りに進んでいる。光環境の違いが及ぼす影響については同じくノシバを使い、平成26年度に実施予定である。小型化メカニズムに関する遺伝学的解析については予定通りシロイヌナズナを用いて、平成26年度に実施予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初、環境要因が連鎖反応に及ぼす影響についてはシロイヌナズナを用いる予定であったが、連鎖的反応が成立する範囲が極めて限定的であるため、安定して連鎖的反応を観察できるノシバを主材料に用いている。ノシバの育成には時間とスペースが必要なため、平成25年度には栄養環境の違いが連鎖的反応に及ぼす影響に絞って調査を行った。その他はほぼ予定通りに進んでいる。光環境の違いが及ぼす影響については同じくノシバを使い、平成26年度に実施予定である。小型化メカニズムに関する遺伝学的解析については予定通りシロイヌナズナを用いて、平成26年度に実施予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は当初予定していた人件費が不要となったほか、多年草を主たる実験材料としたため栽培用物品の経費が大幅に節約され、次年度使用額が発生した。 上記金額については平成26年度に物品費(消耗品費)として利用する予定である。
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