研究課題/領域番号 |
24570050
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
打田 直行 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (40467692)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | シロイヌナズナ / リガンド / 受容体 |
研究概要 |
高等植物の発生では、体を構成する細胞群の間での情報のやりとりが必須となるが、解明されてきた分子機構の例は限られており、様々な細胞間コミュニケーションの新たなメカニズムの解明は重要課題である。erecta (er)変異体は野生型に比べて茎が短い。その原因遺伝子がER遺伝子であり、細胞膜結合型の受容体をコードする。その際にERに作用するリガンドを同定したところ、EPFL4とEPFL6を同定した。発現場所の解析から、内皮で生まれるリガンドが篩部伴細胞でERにより受容されることが花序の形作りで大きな役割を持つことが明らかとなった。er変異体とepfl4 epfl6二重変異体では野生型と比べて茎を構成する細胞の増殖と伸長に顕著な変化が見られるが、これは最終的に成長しきった茎の解析から得た結論である。この結果に対するさらなる解析を目指して、茎の中のどの領域が本事象の影響を最も受ける現場なのかを明らかにするために、野生型、er変異体、epfl4 epfl6二重変異体の茎の細胞の分裂活性と伸長具合を茎の先端から連続的に野生型と比較しながら観察、測定することにした。そのために、そもそも茎のどの部分が茎の伸びにとって重要な制御箇所となるのかを、茎を先端から5mmずつ区切って、その部分ごとのその後の成長を経時観察することで明らかとした。現在、その重要制御部位の切片を作成し、細胞レベルでの変化を野生型、er変異体、epfl4 epfl6二重変異体で比較している。また、時空間的に任意の点でEPFL6をONにできる発現誘導植物(epfl4 epfl6二重変異体背景)を用いて、茎のどの部位でEPFL6がERを刺激すると花序の形態に変化が見られるのか、解析するための、形質転換体の整備を進め、現在は、得られた形質転換体の性質の検証を開始している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に今年度に行うと予定していた研究計画のうちの大部分はおおむね完了した。一部の形質転換体の生育が1世代分だけ遅れてはいるが、次年度の早期には当初のプランに追いつく予定である。また、今年度に、成果の一部は複数の原著論文として発表することも出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度に計画通りに順調に推移して来ているので、今後も、特別の変更は加えずに当初の計画通りに本研究をすすめることで、今後の研究の順調な推進が可能であると考えている。 具体的には、今年度に作成した形質転換体を用いて、EPFL6刺激をOFFからONにした際の遺伝子変動の経時的・網羅的な解析を行うための条件設定を終了することを目指す。準備が終了次第、解析を実施する。その際に用いる形質転換体として、前年度に作成した複数の形質転換体の中で最も使い勝手がよいものを選び出す。そうして最も反応性の良いものを選んだ後には、EPFL6を植物のどの部位で発現させた場合にepfl4 epfl6二重変異体の表現型がレスキューされるのかを、局所的に発現誘導をかけることで解析する。この実験により、篩部伴細胞でのERの刺激後に茎の制御のために発せられる作用が必要とされる茎の部位が同定できる見込みである。さらに、この部位でEPFL6の発現を誘導した際に引き起こされる遺伝子発現の変動の経時的・網羅的な解析を開始する予定である。まず、EPFL6の発現を誘導したまさにその部位からRNAを採取し解析する。誘導開始から短時間経過時には、篩部伴細胞で発現が変動する因子群が多く検出できると考えられる。次に、EPFL6の発現を誘導開始後、細胞レベルで実際に変化が起きる領域からRNAを経時的に採取し解析する。これにより、茎の長さが実際に変化する部位で細胞増殖・伸長の制御に関わる因子群の経時的発現変動が解析できると考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度使用予定であったものの、当初の予定より作成が遅れている分の形質転換体の作成と栽培、チェックに関わる費用を次年度分として使用する。 翌年度以降の使用計画としては、研究に使用する植物の維持・栽培、用いる変異体群の遺伝子型の確認、必要に応じた形質転換体植物の作成など、分子生物学的・遺伝学的実験のための試薬が主に必要になる。平成25年度に関しては網羅発現解析を行うため、他年度よりも多くの消耗品費が必要となると見込んでいる。また、年度ごとに一回ずつの国内学会参加と海外学会参加を行い、自らの研究成果をより広くの研究者に公開し意見を聞くとともに、新たな知識や技術の導入のために、できるだけ広範囲の研究者と交流を行う。
|