研究課題
本研究では、多細胞体制の植物における、組織最外層の表皮による、器官成長の制御機構の解明を目的に以下のような結果を得た。当初計画していた、シロイヌナズナ芽生えの胚軸における細胞層特異的な細胞分取の系ができないと判断し、花茎におけるレーザーマイクロダイセクションの系を取り入れた(名古屋大・森田美代教授との共同研究)。その後、微量サンプルからのRNA-sequencingによる遺伝子発現解析法(Tamaki et al., 2015)を用いて、花茎細胞層特異的な遺伝子発現情報を取得した。その結果、1,700程度の遺伝子群が表皮細胞層に高発現していることが分かった。これらの遺伝子群に関して、Gene ontology(GO)解析を行った結果、表皮細胞で合成・分泌が行われるワックス生合成系のものが濃縮されており、それ以外の細胞層に関しても、既知の機能に対する整合性を持つデータが得られた。また、文献ベースで、特異的発現が報告されているものに関しても検討を行うと、同様なパターンが確認できた。以上にように、本解析による遺伝子発現解析に関して、問題は無いと考え、以降の解析を進めた。本研究が目的にしている成長を制御する表皮由来の因子をさらに、絞り込むために、細胞伸長が盛んな暗所芽生えで明所より発現量の高いものを公共データベースのデータを解析し、表皮層特異的なデータと組み合わせ、成長が盛んで且つ表皮細胞層特異的な73の遺伝子を絞り込んだ。これらの遺伝子群には、推定ペプチド因子、転写因子や細胞壁関連因子を含めた、幾つかのカテゴリーに分類されるものが含まれていた。これらの遺伝子に関して、現在、T-DNA挿入株や、強制発現株を用いた体系的な機能スクリーニングを行っている。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
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