研究課題/領域番号 |
24570057
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
横田 悦雄 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 助教 (80212299)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 小胞体 / RHD3 / レティキュロン / キナーゼ / フォスファターゼ / リン酸化 |
研究概要 |
①小胞体チューブ形成におけるキナーゼやフォスファターゼの効果 シロイヌナズナ培養細胞MM2dから調製した小胞体画分を用いたin vitroチューブ形成系により、市販されているキナーゼやフォスファターゼの効果を調べた。その結果、A-キナーゼやカゼインキナーゼIIによってチューブ形成が促進されることがわかった。また処理後2次元電気泳動によって、レティキュロン(AtRTNLB)やRHD3の等電点を解析したところ、キナーゼ処理により酸性側にシフトする、つまりリン酸化されていることが確認された。そして化学架橋剤EGSによるRHD3の架橋産物が、キナーゼ処理により増加することが明らかになった。従って、小胞体膜融合に寄与しているRHD3の複合体形成をキナーゼが促進することにより、小胞体チューブ形成が起りやすくなると考えられた。一方フォスファターゼ処理では全く変化が見られなかった。この結果から、小胞体画分中に既にフォスファターゼが存在しており、これによってチューブ形成が常に抑制されているという仮説を立てた。そして、Caイオンのキレート剤であるEGTAあるいはCa/CaM依存性フォスファターゼであるカルシニウリンの阻害剤によリチューブ形成が促進されたことから、カルシニウリンがターゲットとするフォスファターゼの一つである可能性が示唆された。 ②RHD3のリン酸化部位の同定 GFP-RHD3が発現しているシロイヌナズナ植物体から、抗GFP抗体を用いた免疫沈降法によりGFP-RHD3を多量に調製し、質量分析によるリン酸化部位の同定を京都大・工学研、桑田啓子博士に依頼した。本研究で着目しているRHD3のC端に存在するセリン残基のクラスター内のいくつかのセリン残基のリン酸化が認められた。とりあえず、リン酸化されていないセリン残基クラスター部位を含む合成ペプチドに対する抗体を作製した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vitro小胞体チューブ形成系を用いて、キナーゼやフォスファターゼの効果を解析することができ、RHD3に関しては複合体形成変化まで明らかにすることが出来た。またフォスファターゼに関しては、カルシニウリンが細胞内で作用するフォスファターゼの一つであることも示唆された。しかし、リン酸化部位、特にRHD3のセリン残基クラスター内のどのセリン残基がリン酸化されているかまでは、解明できなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画通り推進していく予定である。しかし、上述したようにセリン残基クラスター内のリン酸化されているセリン残基の同定は困難である。そこでセリン残基の変異体を作製し、その植物体から調製した小胞体画分を用いたin vitroチューブ形成系により、どのセリン残基のリン酸化が重要であるのかを検討していく予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
各AtRTNLBアイソフォームとRHD3をクローニングし、GSTあるいはHisタグを結合させたリコンビナントタンパク質を大腸菌で発現させ調製する。タグはAtRTNLBではリン酸化部位を含まないC末端に、RHD3ではN末端に結合させる予定である。これらをリポゾームに組み込むことによってチューブ構造を形成させる系を用いて、個々のAtRTNLBアイソフォームやRHD3のリン酸化によるチューブ形成能や会合状態の変化を更に詳細に解析していく。リコンビナントタンパク質単離後、リピッドとの混合時、あるいはチューブ形成後にキナーゼなどの酵素処理を行って、リン酸化状態やチューブ形成能を調べていく。なおリポゾームやチューブの状態は、ネガティブ染色し電子顕微鏡で観察する。またRHD3に関しては、GTPase活性の変化も調べる。そして24年度と同様な方法によって、AtRTNLB間、RHD3間やヘテロなAtRTNLB間の会合状態の変化なども解析する。なお全てのAtRTNLBアイソフォームについて解析を行うことは申請した研究期間内では困難であるため、リン酸化部位であるセリン残基のクラスターが存在するAtRTNLB1,3,4,5,6について解析を行っていく予定である。更にリン酸化可能なセリン残基のクラスターを除去したリコンビナントタンパク質も同時に調製し、上述した方法によってこのクラスターの重要性を検証していく。 また24年度そして今年度作製したリン酸化部位に対する抗体などを用いた免疫蛍光染色法によって細胞内局在を解析し、リン酸化AtRTNLBやRHD3と小胞体の形態の関連性を明らかにしていく。細胞の固定は、表層小胞体ネットワークを含む膜系が良く保存される急速凍結・凍結置換法を用いて行う。この解析は間期の細胞だけではなく、多くの小胞体のチューブ構造が集積する分裂装置にも着目して解析を行っていく。
|