研究課題/領域番号 |
24570057
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
横田 悦雄 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 助教 (80212299)
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キーワード | 小胞体 / RHD3 / キナーゼ / リン酸化 / シロイヌナズナ |
研究概要 |
1. 小胞体膜融合におよぼすキナーゼの効果 前年度は、シロイヌナズナ培養細胞MM2dから調製した小胞体(ER)のチューブ形成におけるキナーゼ(市販されているA-kinaseの触媒サブユニットなど)の効果について解析を行った。今年度はまず、ER膜融合におよぼすキナーゼの効果について調べた。融合活性は、膜融合時に放出されるカルシウムイオンによるエクオリン蛍光強度変化をルミノメーターで測定することにより評価した。その結果、キナーゼ処理により膜融合が促進されることが明らかになった。そして、昨年度作製しておいたRHD3のC端部に存在するセリン残基クラスター配列に対するペプチド抗体でERを処理することにより、膜融合促進・チューブ形成促進といったキナーゼの効果が消失した。質量分析法により、この部位のセリン残基がリン酸化されている結果を既に得ている。今回得られた結果から、キナーゼによるER膜融合・チューブ形成促進は、RHD3のリン酸化による活性化を介して起こっていることが強く示唆された。 2. 細胞内で機能しているキナーゼの同定 細胞内でRHD3をターゲットとする、つまりERネットワーク形成に関与しているキナーゼの同定を試みた。GFPでラベルされたERが発現しているタバコ培養細胞をCa-A23187で処理すると、表層ERネットワークは袋状構造に変化するが、試薬を除くことによりネットワークは回復する。この回復を抑制する、つまりネットワーク形成を阻害する、ある種のキナーゼ特異的な阻害剤を検索した。その結果、いくつかのキナーゼ阻害剤が回復を抑制した。更にこれらのキナーゼがER膜融合過程に関与していることを明確にするために、それらの阻害剤が表層ERチューブ融合におよぼす効果を解析しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RHD3による小胞体(ER)膜融合過程が、キナーゼによるリン酸化によって促進されている、つまりキナーゼのターゲットがRHD3であることが明らかになった。しかし、大腸菌で発現させたリコンビナントRHD3をリポゾームに組み込んだ系を用いて、より直接的にRHD3のリン酸化の膜融合促進への関与を示すには至らなかった。来年度引き続きこの系の確立を試みたい。 表層ERネットワークの回復を抑制するキナーゼ阻害剤を探索することにより、ネットワーク形成に関与すると思われるキナーゼを絞り込むことができた。ただ、ネットワーク全体の回復を指標として探索を行ったため、実際にこれらのキナーゼが本当にRHD3によるER膜融合に関与しているのかを明確にする必要がある。現在研究を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
より直接的にRHD3がキナーゼのターゲットであることを示すために、大腸菌で発現させたリコンビナントRHD3をリポゾームに組み込んだ系を用いてキナーゼの影響を解析していく。またRHD3のC端部に存在するセリン残基のクラスターが重要なリン酸化部位であり、活性調節に関与していることを明らかにするために、この部位を欠損させた、あるいはセリン残基を他のアミノ酸で置換した変異RHD3をリポソームに組み込んだ系を用いて解析を行っていく。 細胞内で機能しているキナーゼの同定を引き続き行っていく。候補として考えられたキナーゼに関して、ペプチド抗体による蛍光抗体法、あるいは蛍光タンパク質を連結されたキナーゼを発現させることにより、細胞内局在や表層小胞体との関連を調べていく。
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