前年度までに明らかにした、RHD3のリン酸化部位であり、シロイヌナズナ培養細胞の単離小胞体(ER)膜の融合やチューブ形成の促進に関与するC端部セリン残基クラスター部位の役割について、シロイヌナズナRHD3変異体を解析することにより詳細に解明することを試みた。共同研究を行っている京都大学西村いくこ教授・上田晴子研究員が作製したRHD3C端部セリン残基クラスターを除去したRHD3変異体、あるいはセリン残基をアラニン残基に置換したRHD3変異体を発現させたシロイヌナズナ株のER形態と動態や成長などを解析したところ、野生種とほとんど違いがなく、顕著な表現型は検出されなかった。しかしそれらの変異体から調製したER膜は、キナーゼ感受性が消失していた。つまり変異体ER膜融合やチューブ形成は、野生種から単離したER膜とは異なり、A-キナーゼ触媒サブユニットなどのキナーゼ処理により促進されなかった。これらの結果は、キナーゼによるER膜融合促進に必要な部位は、確かにRHD3C端部のセリン残基クラスターであることを強く示している。またその部位のリン酸化はER膜融合に必要不可欠ではなく、何らかの調節機構に関与している可能性が示唆された。今後細胞内におけるこの調節機構の役割を明らかにしていく必要がある。 本研究を通して、RHD3のリン酸化によりER膜融合やチューブ形成が促進されること。MS解析や変異体解析などにより、これらの促進と共役するリン酸化部位がC端部セリン残基クラスターに存在すること。そしてその部位のリン酸化によってRHD3会合体形成も促進されることなどが明らかになった。これらの結果から、リン酸化RHD3がER膜上でより多くの会合体を形成することで融合が促進されるというモデルを提案し、現在論文を投稿中である。
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