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2013 年度 実施状況報告書

リボソームによる植物発生制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24570060
研究機関立教大学

研究代表者

堀口 吾朗  立教大学, 理学部, 准教授 (70342847)

キーワードリボソーム / シロイヌナズナ / 葉の向背軸 / NAC型転写因子
研究概要

シロイヌナズナにおいて、リボソームタンパク質遺伝子の欠損は様々な発生異常を生じる。そこで、この現象に関わるリボソーム側の要因とそれに制御されるmRNAについてそれぞれ解析を進めている。特に、リボソームタンパク質遺伝子の一種RPL4Dと転写制御因子AS2の2重欠損変異株は葉が棒状化する顕著な葉の向背軸異常を示すため、詳細な解析を進めている。昨年度、rpl4d as2の向背軸異常を抑圧するサプレッサー遺伝子としてANAC103を同定した。as2の向背軸異常は第2の様々な変異によって促進されるが、ANAC103の変異は、プロテアソームサブユニット遺伝子、Elongator複合体サブユニット遺伝子の欠損によるものは抑制する一方、tasiRNA合成経路遺伝子やAN3遺伝子の欠損によるものは抑制できなかった。このことは、リボソーム、プロテアソーム、Elongator複合体に共通した何らかのプロセスが背腹性制御に重要であることを示している。
一方、リボソーム側の要因としては、rpl4dおよびrpl4aの幾つかのアリルについて、5’-および3’-RACE PCR法により変異型mRNAの構造を決定した。rpl4d-3については、野生型の約1/10のレベルで変異型mRNAが蓄積していた。この変異型rpl4d-3をas2背景で過剰発現させると葉の向背軸性異常が促進された。従って、変異型RPL4Dタンパク質が向背軸性異常をもたらす一因である可能性が示唆された。また、野生型RPL4DとGFPとの融合タンパク質をrpl4dで発現させると、rpl4dの様々な表現型がある程度回復することが確認できたため、この融合タンパク質遺伝子を用いたより詳細な解析を進める準備が整った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度問題点としてあげたリボソームの生化学的解析については、引き続き条件検討を進めている。その一方で、代替手段としてあげたGFPラベルしたリボソームについては、順調な結果が得られ、今後、組織特異的にリボソームを可視化しつつ、背腹性との関連を調べる実験や、変異型リボソームをGFPラベルするなどの実験を進めていける状況である。突然変異によるリボソームの減少が背腹性異常の原因となっている可能性を検討するため、RPL4DのRNAi系統の作出を進めているが、これも、系統が揃い出したところである。また、新規のサプレッサー遺伝子についても候補が得られ、最終年度ではその詳細な解析が期待できる。
一方、rpl4とは異なった特徴を持つ、RPS28ファミリーの変異株については多重変異株がほぼ揃い、表現型解析を待つ状態になっている。
また、uORFを持ち翻訳制御を受ける遺伝子の候補としてGRF5を解析している。ここでは、GRF5の発現レベルを可視化する目的で、GRF5 promoterとuORFを含む5'制御領域の下流にphytoen desaturase (PDS)遺伝子に対するRNAiカセットを連結したコンストラクトを野生型に導入し、葉が薄緑色に変化する系統を得た。この系統をEMS処理したM2種子が得られており、GRF5の翻訳制御に関わる変異株のスクリーニングも行える準備が整った。
一方、翻訳制御を受ける可能性を検討しているANAC103については、その発現をモニターするレポーター系統を作出したもののレポーター活性が非常に弱く、研究材料としては不適当であることが分かった。
このように、幾つかの問題点があるものの、最終年度に向けたデータ出しの準備が整っており、研究は概ね順調と判断した。

今後の研究の推進方策

現在までにGFPラベルしたリボソームが十分機能的であることが確認できた。次年度は、それを組織特異的にas2 rpl4dに発現させ、背腹性異常が回復するかどうかを検討する。これにより、リボソームの機能が葉全体で必要なのか、特異的な組織で十分なのかについて検討を進めて行く。また、rpl4d変異に起因する背腹性異常の原因を、リボソームの量や構造異常を区別しながら解析する材料が揃いつつあるので、この点について全力で取り組む。
ANAC103はrpl4d as2で過剰発現し、葉を棒状化させるが、野生型で過剰発現させても葉が棒状化することはなかった。興味深いことに、as2 rpl4d anac103でANAC103を過剰発現させても、葉が棒状化することはなかった。この原因については、組織特異的なANAC103の過剰発現が重要である可能性を考えている。しかし、ANAC103の発現パターンについては、有用なレポーター系統が作出できず、解析が難航している。この点を克服するためin situ hybridizationを行う。その情報を元にANAC103の組織特異的な過剰発現により、葉の向背軸異常が生じるか否かを検討する。
一方、rpl4dやrps28b以外に特有の発生異常を示すリボソームタンパク質遺伝子の有無を検討するために、様々なリボソームタンパク質遺伝子についてT-DNA挿入変異株を収集し解析を進めている。しかしながら、現在のところ特徴的な表現型を持つ変異株は見いだされていない。最終年度も、未解析の変異株についての解析を着実に進める。

次年度の研究費の使用計画

本年度は約11万円の繰り越しが生じた。これは、年度の境目の時期にチップ、チューブなどの消耗品、分子生物学試薬などの欠品を防ぎ、研究を停滞させないためであった。
平成26年度もas2 rpl4dのサプレッサー変異株の1つについて原因遺伝子の特定を進めるため、次世代シークエンス解析費25万円の予算を計上した。その他の消耗品費は、分子生物学実験(PCR、定量的RT-PCR、形質転換植物作成、表現型解析など)、生化学実験(リボソーム関連因子のWestern解析、in vitro翻訳系による解析など)、植物栽培などに充てる。また、研究成果を発表するための国内、海外旅費、研究成果の論文投稿費も計上した。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Nitrogen dioxide regulates organ growth by controlling cell proliferation and enlargement in Arabidopsis2013

    • 著者名/発表者名
      Takahashi, M., Furuhashi, T., Ishikawa, N., Horiguchi, G., Sakamoto, A., Tsukaya, H., Moikawa, H.
    • 雑誌名

      New Phytol.

      巻: 201 ページ: 1304-1315

    • DOI

      10.1111/nph.12609

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Class III compensation, represented by KRP2 overexpression, depends on V-ATPase activity in proliferative cells2013

    • 著者名/発表者名
      Ferjani, A., Ishikawa, K, Asaoka, M., Ishida, M., Horiguchi, G., Maeshima, M., Tsukaya, H.
    • 雑誌名

      Plant Sig. Behav.

      巻: 8 ページ: e27204

    • DOI

      10.4161/psb.27204

  • [雑誌論文] Promotion of chloroplast proliferation upon enhanced post-mitotic cell expansion in leaves2013

    • 著者名/発表者名
      Kawade, K., Horiguchi, G., Ishikawa, N., Yokota Hirai, M., Tsukaya, H.
    • 雑誌名

      BMC Plant Biol.

      巻: 13 ページ: 143

    • DOI

      10.1186/1471-2229-13-143

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Enhanced Cell Expansion in a KRP2 overexpressor is mediated by increased V-ATPase activity.2013

    • 著者名/発表者名
      Ferjani, A., Ishikawa, K., Asaoka, M., Ishida, M. Horiguchi, G., Maeshima, M., Tsukaya, H.
    • 雑誌名

      Plant Cell Physiol.

      巻: 54 ページ: 1989-1998

    • DOI

      10.1093/pcp/pct138

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The ATM-dependent DNA damage response acts as an upstream trigger for compensation in the fas1 mutation during Arabidopsis leaf development2013

    • 著者名/発表者名
      Hisanaga, T., Ferjani, A., Horiguchi, G., Ishikawa, N., Fujikura, U., Kubo, M., Demura, T., Fukuda, H., Ishida, T., Sugimoto, K., Tsukaya, H.
    • 雑誌名

      Plant Physiol.

      巻: 162 ページ: 831-841

    • DOI

      10.1104/pp.113.216796

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ANGUSTIFOLIA3 signaling coordinates proliferation between clonally distinct cells in leaves2013

    • 著者名/発表者名
      Kawade, K., Horiguchi, G., Usami, T., Hirai, M.Y., Tsukaya, H.
    • 雑誌名

      Curr. Biol.

      巻: 23 ページ: 788-792

    • DOI

      10.1016/j.cub.2013.03.044

    • 査読あり
  • [学会発表] 根の発生におけるプラスチドタンパク質RFC3の機能解析2014

    • 著者名/発表者名
      中田未友希、塚谷裕一、堀口吾朗
    • 学会等名
      日本植物生理学会
    • 発表場所
      富山大学、富山県、富山市
    • 年月日
      20140320-20140320
  • [学会発表] ボソームタンパク質RPL4DのGFP標識とその機能性についての解析2014

    • 著者名/発表者名
      堀口吾朗、中田未友希、塚谷裕一
    • 学会等名
      日本植物生理学会
    • 発表場所
      富山大学、富山県、富山市
    • 年月日
      20140318-20140318
  • [学会発表] an3依存的補償作用に関与する外的因子の検討2014

    • 著者名/発表者名
      江崎 和音、川出 健介、堀口吾朗、塚谷 裕一
    • 学会等名
      日本植物生理学会
    • 発表場所
      富山大学、富山県、富山市
    • 年月日
      20140318-20140318
  • [学会発表] シロイヌナズナのWD40リピートタンパク質をコードするOLIGOCELLULA1は異形葉性を通じて葉のサイズ制御に関わる2013

    • 著者名/発表者名
      篠塚 奈々絵、平方 智大、藤倉 潮、出村 拓、塚谷 裕一、堀口 吾朗
    • 学会等名
      日本植物学会
    • 発表場所
      北海道大学、北海道、札幌市
    • 年月日
      20130915-20130915
  • [学会発表] NAC型転写因子をコードするSZK1遺伝子の高発現が葉の背腹性に及ぼす効果の解析2013

    • 著者名/発表者名
      堀口吾朗、塚谷裕一
    • 学会等名
      日本植物学会
    • 発表場所
      北海道大学、北海道、札幌市
    • 年月日
      20130915-20130915
  • [学会発表] シロイヌナズナの器官サイズ異常変異株little princeはミトコンドリアnad6 mRNAのエディティング異常を示す2013

    • 著者名/発表者名
      石橋幸大、濱田ゆかり、中村崇裕、塚谷裕一、堀口吾朗
    • 学会等名
      日本植物形態学会
    • 発表場所
      北海道大学、北海道、札幌市
    • 年月日
      20130912-20130912
  • [学会発表] Mutations in a NAC-domain transcription factor gene, SUZAKU1, suppress leaf abaxialization caused by the defects of ribosomal proteins2013

    • 著者名/発表者名
      Gorou Horiguchi, Hiroki Shimada, Tatsuya Watanabe, Hirokazu Tsukaya3
    • 学会等名
      FASEB Conference: Mechanisms in Plant Development
    • 発表場所
      Vermont academy, Saxtons River, Vermont, USA
    • 年月日
      20130812-20130812
  • [備考] 立教大学理学部堀口研究室ホームページ

    • URL

      http://www2.rikkyo.ac.jp/web/horiguchi/plant/home.html

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公開日: 2015-05-28  

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