研究課題/領域番号 |
24570064
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齊藤 知恵子 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任准教授 (10321762)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シロイヌナズナ / 液胞 / ライブイメージング / 遺伝学 |
研究概要 |
植物の液胞は大きな体積と広い表面積を持ち,植物の発生,形態形成,環境応答などにおいて,多彩な機能を発揮する.しかし液胞膜の持つ複雑な立体構造の生物学的な意義についてはほとんど明らかとなっていない.液胞膜上のサブ領域様構造bulbや,原形質糸など液胞膜の陥入構造について,その分子的基盤や機能の解明を目指して研究を行っている. 【遺伝学】順遺伝学的に,顕微鏡スクリーニングによりbulbの数が減る変異体を既に複数得ていた.そのうち2つについて,遺伝子決定のためにLerエコタイプと掛け合わせを行いF2集団を得た.うち1つについては奈良先端大倉田准教授グループと共同研究で次世代シーケンサーによる解析で候補遺伝子を絞り込み,アレリズムテストで原因遺伝子を決定した.さらなる機能解析のために,原因遺伝子産物と蛍光タンパク質の融合タンパク質をシロイヌナズナ培養細胞内で発現させ,その細胞内局在を調べた.また同じコンストラクトをアグロバクテリウムによりシロイヌナズナ個体に形質転換した. 【生化学】ナノスプレーチップにより直接液胞膜を吸い取り,普通の液胞膜とbulbの間の脂質の組成に差がないかどうか調べる実験を計画している.用いる材料が遺伝子組換え植物となるため,理化学研究所QBiCが遺伝子組換え実験の許可を得る必要があった.その申請をサポートするとともに,QBiCを訪問して具体的な操作手順について研究打ち合わせを行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
形態学的なアプローチについては,申請者の東京大学への転出に伴い,共焦点スキャナボックスCV1000によるタイムラプスイメージングの実験が難しくなった.そのかわり,転出先で代替となり得る共焦点レーザー顕微鏡FV1200が導入され,計画していたのと同様の解析を次年度以降行う予定である.また,液体ヘリウムを用いた金属圧着固定による電子顕微鏡観察を予定していたが,理化学研究所にあった装置HIF4Kの修理とテストランを2回試みたが,シャッター機能などメカニカルな駆動部が大量の霜の発生によって操作不能となった.おそらく経年劣化による気密性の低下などが原因で,気体ヘリウム用のチャンバーから低温のヘリウムが漏れて霜の発生に繋がったものと考えられる.代わりとなる方法や条件を模索している.考えられるのは,液体ヘリウムによる金属圧着にこだわるのであれば,他の機関に代替となる装置を借りに行く必要がある.あるいは,高圧急速凍結でも表皮細胞の構造を維持できるような条件を検討することも考えられる. 生化学的なアプローチについては,理化学研究所QBiCの升島教授の研究室で行われているナノスプレーチップ法を用いて,通常の液胞膜やbulbの部分を顕微鏡下で観察しながら別々に吸い取り,それを直接質量分析にかけることで,脂質の組成の差をみる実験を計画している.遺伝子組換え実験の承認が下りるまでに時間がかかったが,次年度以降は鋭意進めていきたいと考えている. 形態学や生化学では遅れている部分もあるものの,遺伝学的アプローチでは,一つの変異体の原因遺伝子を決定することに成功し,もう一つについても次世代シーケンサー解析の準備中である.
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今後の研究の推進方策 |
遅れ気味であった形態学的アプローチについては,一つ一つの問題をクリアしながらデータを揃えて行きたい.生化学的アプローチについては,理化学研究所QBiCとの連携を密に取って,ナノスプレーチップでの解析を進めていきたい.遺伝学的アプローチについては,あと2年のうちに最低でももう一つの変異体について原因遺伝子を決定したい.
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次年度の研究費の使用計画 |
次世代シーケンサー解析用ライブラリ調製用試薬,次世代シーケンサー解析料,理化学研究所QBiCでの研究打ち合わせと実験,など.
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