研究課題/領域番号 |
24570065
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
金 鍾明 独立行政法人理化学研究所, 植物ゲノム発現研究チーム, 研究員 (90415141)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
シロイヌナズナの脱アセチル化酵素Hda6が、植物ゲノムの基本構造構築に寄与するゲノム上の領域を検出するため、プレート培地上で生育させたhda6変異株と野生株を用いて、抗ヒストンH4アセチル化修飾抗体を用いたクロマチン免疫沈降実験(ChIP法)を行い比較した。この結果、hda6変異株では、レトロトランスポゾンに属するGypsyおよびLINEタイプの2つのトランスポゾンファミリーにおいて、特異的にヒストンH4アセチル化の有為な高度蓄積が見られた。また、これらレトロトランスポゾン群は、シロイヌナズナ染色体のペリセントロメア領域に多く局在していることから、GypsyおよびLINEトランスホポゾンファミリーを介した、ペリセントロメア領域におけるヘテロクロマチン構造の弛緩が同定された。また、ヒストンH4アセチル化をターゲットとした FISH実験を行ったところ、染色体上のクロマチンの弛みが観察できた。さらに、抗HDA6特異抗体を用いたChIP-on-chip法により、ゲノムワイドなHDA6結合領域を検出できた。現在、本実験結果を用いて、HDA6の結合ターゲットに関して、ユークロマチンおよびヘテロクロマチン領域の構造をもとづいた解析を進めている。また、ここで使用した、この抗HDA6特異抗体を用いてHDA6複合体の構成因子同定を目的とした、免疫沈降実験を行うため、現在実験条件の検討を進めている。さらに、HDA6複合体検出には多量の特異抗体が必要となるため、手持ちの抗HDA6特異抗体の抗血清さらに精製して、結合活性の高い特異抗体を精製するとともに、新規に抗HDA6モノクローナル抗体の作成を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、シロイヌナズナのゲノム維持、および遺伝発現調節に機能するヒストン脱アセチル化酵素 Hda6 複合体の構成因子探索を中心として、植物のゲノム基盤構築に必須なエピゲノム構造と因子を同定することである。シロイヌナズナの脱アセチル化酵素HDA6が、このエピゲノム因子の中心的役割をになっていることが示唆できた。また、ゲノムワイドなHDA6のターゲット領域を同定できたことから、 Hda6 複合体の機能と制御様式を解明するための端緒がつかめたと考える。また、Hda6 の標的となる特異的な遺伝子領域に、機能的、構造的な差異が見られたことから、これらはシロイヌナズナのゲノム維持の解明に大きくつながる成果であり、本研究は順調に進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
シロイヌナズナHda6がゲノムの基本構造構築に寄与するゲノム領域を検出するため、プレートで生育させたhda6変異株と野生株に対して、抗ヒストンH4アセチル化修飾抗体を用いたクロマチン免疫沈降実験(ChIP法)を行った結果、hda6変異株では、GypsyおよびLINEに属するトランスポゾン群を介したペリセントロメア領域のヒストンH4アセチル化の高度蓄積と、ヘテロクロマチン構造の弛緩が同定された。また、抗HDA6特異抗体を用いたChIP-on-chip法により、ゲノムワイドなHDA6結合領域を同定できたことから、ユークロマチン領域における、抗ヒストン修飾抗体を用いたクロマチン免疫沈降実験(ChIP法)を行い、遺伝子発現制御におけるHDA6機能を解析する。 昨年度新規に作成を試みている抗HDA6モノクローナル抗体を用いて、免疫共沈降法により、HDA6タンパク質と相互作用する因子の検索を進める。これらの情報をもとに、ヘテロクロマチン領域の制御に特異的に機能するHDA6複合体の同定を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画の遂行に当たって、実験条件検討を含む更なる予備実験を行う必要性が出たため、24年度中に実施予定であったChIP-seq実験と解析を一部先送りした結果、繰越金が発生した。この繰越金を含む180万円程度の予算を、25年度の抗ヒストン修飾抗体を用いたクロマチン免疫沈降実験(ChIP法)およびChIP-seq解析に使用する予定である。 また、抗HDA6モノクローナル抗体を用いたHDA6タンパク質と相互作用する因子の検索に残りの全額を当てる予定である。
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