研究課題/領域番号 |
24570067
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
赤染 康久 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50302807)
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キーワード | ニューロペプチドFF / GPF74 / メダカ / キスペプチン / プロテインキナーゼA / 終神経 / GnRH |
研究概要 |
平成25年度は、ニューロペプチドFF(以下NPFFと略)およびその受容体の分子生物学的解析および遺伝子組換え動物実験に取り組んだ。ヒトにおいてキスペプチンがNPFF受容体に作用し得るとする報告に接してメダカにおけるNPFFおよびその受容体の機能解析に着手していたところであったが、代表者らの解析から、メダカにおいてNPFFは終神経GnRH3ニューロンにほぼ特異的に産生され、しかもNPFF受容体も終神経GnRH3ニューロンを含む様々な脳領域で発現することが判明した。(一般に神経ペプチドは中枢において神経修飾物質として機能するが、神経ペプチドの標的ニューロンは未知であることがほとんどである。すなわち終神経GnRH3ニューロンのNPFFの分泌・受容(作用)機構の解析は、ペプチドニューロンと、その標的ニューロンとを同時に解析することに他ならない。)NPFF受容体のNPFFによる活性化の評価から、NPFFは濃度によりNPFF受容体のGiシグナリングとGsシグナリングとを活性化しうることが見いだされた。実際にNPFFが終神経GnRH3ニューロンにおいてどのように作用しているかを解析する目的で、メダカにおけるNPFFの遺伝子ノックアウトに取り組み、NPFFノックアウトメダカを得ることができた。現在はこの動物を電気生理学的解析に供するために、さらに終神経GnRH3ニューロンをGFP標識したメダカの作成に取り組み、こちらも出来上がりつつある。一方、NPFF受容体は終神経GnRH3ニューロンのみならず、様々なニューロンで発現するため、終神経GnRH3ニューロン特異的なノックアウトの必要を感じ、Cre-loxPシステムと呼ばれる細胞特異的な遺伝子改変技術の応用に着手し、終神経GnRH3ニューロン特異的なCre(大腸菌由来のDNAレコンビナーゼ)の発現誘導に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NPFFノックアウトメダカの作出に一応成功したが、さらに電気生理学的な解析にあてる目的で、NPFFニューロン(メダカの場合終神経GnRH3ニューロンとほぼ同義)をGFP標識して、生きた状態でニューロンを同定して解析しうる系の樹立に取り組んでいる。ここまでほぼ1年あまりで達成されており、一応懸念していた致死性や発生上の不具合も認められず、おおむね順調に推移しているものと捉えている。他方、Cre-loxPシステムのメダカへの応用では、メダカ遺伝子に対するノックインの最適な条件を模索しており、幾分の遅れを認めざるを得ないが、所属研究室で実際にノックインが実行されており、協力を得て鋭意解決に向け取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
ついにNPFFノックアウト兼NPFFニューロン(終神経nRH3ニューロン)GFP標識メダカがほぼ作出に至ったことを受け、同ニューロンの電気生理学的な解析にあてる予定である。具体的には、バースト様発火と呼ばれる神経発火活動に対する、NPFF投与の及ぼす作用を、今回作成した組換えメダカを材料として解析したいと考えている。バースト様発火はペプチド放出に必須の現象と考えられている。すなわち、ペプチドによる修飾が、ニューロンの細胞体の興奮性の変化を通じて、ペプチドの放出制御に寄与していると考えているためである。当面は終神経GnRH3ニューロンでバースト様発火活動を惹き起こす条件の模索が直近の課題となるが、最近キンギョなどで見いだされた条件を参考にクリアしてゆく考えである。キンギョでの実験条件は代表者の所属研究室で発見されたものであるので、研究実施の上できわめて有利な環境に置かれていると認識している。代表者自身は分子生物学を専門分野としてきたが、電気生理学的解析の研究者と実験装置が所属研究室に所属しており、この点もきわめて有利であると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究・実験内容が比較的同一の手法で効率的に実施されたため、前年度の購入品である部分カバーされたため。 今後遺伝子ノックアウト動物の作出・使用が軌道に乗るにつれ、使用動物の遺伝子型チェック等でかなりのサンプル数のDNAシーケンス解析等で支出が増大すると見込んでおります。次年度使用額と当初予定額を併用して有効活用する考えです。
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