研究課題
基盤研究(C)
本研究は、骨形成の2大様式である「膜性骨化」と「軟骨性骨化」に対するメラトニンと時計遺伝子による制御機構を解明するものである。本年度は、「膜性骨化」に対する概日時計による制御機構を明らかにするための実験を行った。これまでの研究において、12時間明:12時間暗の24時間周期や恒明条件下においては、再生鱗に存在する隆起線(成長線)は、1日に1本ずつ外側に形成されることを明らかにしており、またその時、少なくとも再生鱗のper-3の遺伝子発現に明瞭な概日リズムを観察している。そこで、本年度は、再生鱗における概日リズムに関与する時計遺伝子として、per1~3と骨芽細胞関連遺伝子(dlx5、typeIcollagen、osteocalcin、ALP)の発現リズムをリアルタイムPCRで調べた。再生14日目においては、時計遺伝子のper3と骨芽細胞関連遺伝子のdlx5、typeIcollagenの発現が明瞭な概日リズムを示した。次に、10L10D(20時間周期)と14L14D(28時間周期)の24時間以外の日周期で飼育した時の隆起線形成状態を観察した。その結果、20時間及び28時間周期に同調した個体の隆起線の本数は、24時間周期の本数と比較すると、20時間周期では約2本多く、28時間周期では約1本少ないことが明らかとなった。また、一部を切除した鱗を自家移植し、切除された部分に形成される再生鱗を観察すると、通常形成される再生鱗の構造と同じ、中央部では亀甲様構造が、端では隆起線が再生されることが明らかとなった。これらの結果は、時計遺伝子per3と骨芽細胞関連遺伝子のdlx5、typeIcollagenが隆起線形成の日周性を制御している可能性を示すものである。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目標の一つである再生鱗形成の日周性に関与する時計遺伝子と骨芽細胞関連遺伝子の発現リズムの解析に関して、本年度はper1~3とdlx5、typeIcollagen、osteocalcin、ALPについて終了した。また、10L10D(20時間周期)や14L14D(28時間周期)のように24時間以外の日周期で飼育した時の隆起線形成状態の観察に関しても、当初はデータの振れが大きく上手く行かなかったが、各個体のアクトグラムを取る方法を導入することによって同調した個体だけを選ぶことができ、その結果、ほぼ予想通りの結果が得られた。
本研究の目標の一つである再生鱗形成の日周性に関与する時計遺伝子と骨芽細胞関連遺伝子の発現リズムの解析に関しては、新たに時計遺伝子としてCry1ab, Cry2ab, clook, Bmal1を調べ、骨芽細胞関連遺伝子としては転写調節因子のRunx2a, Runx2b, osterix について調べる予定である。また、一部を切除した鱗を自家移植し、切除された部分に形成される再生鱗を観察した結果、通常形成される再生鱗の構造と同じ、中央部では亀甲様構造が、端では隆起線が再生されたことから、鱗を収納するポケットの構造が再生鱗の形作りに重要である可能性が出てきたので、走査型電子顕微鏡を使ってポケット内の構造を観察する予定である。さらに、メラトニンを作用させる実験も行う予定である。
これらの研究を行う機器備品はすでに当研究室に揃っているので、研究費は、消耗品と学会発表等の旅費にあてる予定である。
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