魚鱗の再生と両生類変態期の後肢形成を骨形成モデルとしたメラトニンの制御機構の解明

2013 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 24570068
• 研究機関: 東京医科歯科大学
• 研究代表者: 服部 淳彦 東京医科歯科大学, 教養部, 教授 (70183910)
• 研究分担者: 田渕 圭章 富山大学, 生命科学先端研究センター, 准教授 (20322109)
• キーワード: 軟骨性骨化 / 変態 / 軟骨 / 骨 / メラトニン / メラトニン受容体

研究概要

本研究は、骨形成の２大様式である「膜性骨化」と「軟骨性骨化」に対するメラトニンによる制御機構を解明するものである。昨年度は、キンギョの再生鱗を「膜性骨化」のモデルとして用いて、概日時計による制御機構を明らかにするための実験を行った。本年度は、変態期両生類幼生の後肢（骨）形成を「軟骨性骨化」のモデルとして用い、その形成過程の詳細を調べるとともに、メラトニンによる制御機構を明らかにすることを目的とした基礎実験を行った。まず、ウシガエルおよびアフリカツメガル幼生の後肢形成に伴う骨形成過程を、透明標本と組織切片を作製して観察した。次いで、ウシガエル幼生後肢（骨）における、メラトニン受容体（Mel1b）のｍRNA発現ならびに骨芽細胞のマーカーであるOsteocalcinのmRNA 発現をReal-Time PCR法を用いて検討した。透明標本と組織切片を観察した結果、両生類幼生の後肢は、前変態期ではほぼ全てが軟骨よりなり、変態始動期の初期から骨化が進んでいくことが明らかとなった。ウシガエル幼生後肢（骨）におけるメラトニン受容体（Mel1b）mRNAの発現は、前変態期では高く、変態始動期の初期に低くなり始め、その後のステージでは発現は低いままであった。一方、骨芽細胞のマーカーであるOsteocalcinのmRNA発現は、前変態期から変態始動期の前半までは低く、変態始動期の後半から変態最盛期にかけて高くなっていた。この結果は、組織標本の結果を支持するものであった。以上の結果より、メラトニンは、骨芽細胞だけでなく軟骨細胞も制御している可能性が示された。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目標の一つである「軟骨性骨化」に対するメラトニンの制御機構を解明するために、まずは「軟骨性骨化」のモデル系の検討を行った。本実験では変態期両生類幼生の後肢（骨）形成にスポットを当てて、組織学的および分子生物学的検討を行い、基盤となるデータに関しては、ほぼ得ることができた。

今後の研究の推進方策

最終年度は、「膜性骨化」に対するメラトニンによる制御機構を明らかにするために、魚類の再生鱗を用いて、昨年度に調べ終わったper遺伝子以外の複数の時計遺伝子のｍRNA発現の日周リズムと隆起線形成との関連を明らかにする。すなわち、20時間周期や28時間周期で飼育されたキンギョの再生鱗における各時計遺伝子と骨芽細胞関連遺伝子のｍRNA発現の日周変化を調べる予定である。また、培養再生鱗を用いてメラトニンの添加実験を行い、各骨芽細胞関連遺伝子や時計遺伝子のｍRNA発現に対する影響を調べることにより、本研究テーマの解明を目指す。

次年度の研究費の使用計画

見込額より、実験に必要な経費が低く、差額が生じたため。
平成26年度の経費とともに消耗品にあてる予定。

研究成果

• [雑誌論文] Increased PGE2 has a positive correlation with plasma calcium during goldfish reproduction. (2014)
  • 著者名/発表者名: Suzuki, N., Maruyama, Y., Nakano, M., Hattori, A., Honda, M., Shimazaki, Y., Sekiguchi, T., Kamauchi, H., Mishima, H., Wada, S., Srivastav, A.K., Hayakawa, K. and Oshima, Y.
  • 雑誌名: J. Fac. Agr., Kyushu Univ. 巻: 59 ページ: 97-101
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] メラトニンと宇宙と骨代謝 (2014)
  • 著者名/発表者名: 服部淳彦，五十嵐－右高潤子，池亀美華，矢野幸子，染井正徳，鈴木信雄
  • 雑誌名: 内分泌・糖尿病・代謝内科 巻: 38 ページ: 190-200
• [雑誌論文] Polychlorinated biphenyl (118) activates osteoclasts and induces bone resorption in goldfish. (2014)
  • 著者名/発表者名: Yachiguchi, K., Matsumoto, N., Haga, Y., Suzuki, M., Matsumura, C., Tsurukawa, M., Okuno, T., Nakano, T., Kawabe, K., Kitamura, K., Toriba, A., Hayakawa, K., Chowdhury, V.S., Endo, M., Chiba, A., Sekiguchi, T., Nakano, M., Tabuchi, Y., Kondo, T., Wada, S., Mishima, H., Hattori, A. and Suzuki, N.
  • 雑誌名: Env. Sci. Poll. Res. 巻: 21 ページ: in press
  • 査読あり
• [雑誌論文] Effect of inorganic mercury and methylmercury on osteoclasts and osteoblasts in the scales of the marine teleost as a model system of bone. (2014)
  • 著者名/発表者名: Yachiguchi, K., Sekiguchi, T., Nakano, M., Hattori, A., Yamamoto, M., Kitamura, K., Maeda, M., Tabuchi, Y., Kondo, T., Kamauchi, H., Nakabayashi, H., Srivastav, A.K., Hayakawa, K., Sakamoto, T. and Suzuki, N.
  • 雑誌名: Zool. Sci. 巻: 31 ページ: in press
  • 査読あり
• [雑誌論文] Static and dynamic hypergravity responses of osteoblasts and osteoclasts in medaka scales. (2013)
  • 著者名/発表者名: Yano, S., Kitamura, K., Satoh, Y., Nakano, M., Hattori, A., Sekiguchi, T., Ikegame, M., Nakashima, H., Omori, K., Hayakawa, K., Chiba, A., Sasayama, Y., Ejiri, S., Mikuni-Takagaki, Y., Mishima, H., Funahashi, H., Sakamoto, T. and Suzuki, N.
  • 雑誌名: Zool Sci. 巻: 30 ページ: 217-223
  • DOI: 10.2108/zsj.30.217.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Zebrafish scales respond differently to in vitro dynamic and static acceleration: analysis of interaction between osteoblasts and osteoclasts. (2013)
  • 著者名/発表者名: Kitamura, K., Takahira, K., Inari, M., Satoh, Y., Hayakawa, K., Tabuchi, Y., Ohgai, K., Nishiuchi, T., Kondo, T., Mikuni-Takagaki, Y., Chen, W., Hattori, A. and Suzuki, N.
  • 雑誌名: Comp. Biochem. Physiol. Part A 巻: 166 ページ: 74-80
  • DOI: 10.1016/j.cbpa.2013.04.023.
  • 査読あり
• [雑誌論文] 宇宙メラトニン研究と抗加齢医学との接点 (2013)
  • 著者名/発表者名: 服部淳彦，池亀美華，矢野幸子，染井正徳，鈴木信雄
  • 雑誌名: 日本抗加齢医学会雑誌 巻: 9 ページ: 356-363
• [雑誌論文] 象牙質の成長線の周期と体内時計の情報伝達分子のメラトニンの分泌リズムの関連 (2013)
  • 著者名/発表者名: 三島弘幸，井上昌子，門田理佳，服部淳彦，鈴木信雄，筧 光夫，松本 敬，里村一人，見明康雄
  • 雑誌名: 日本再生歯科医学会雑誌 巻: 11 ページ: 27-39
• [学会発表] メラトニン投与における象牙質の成長線の形成や象牙質組成に関する分析学的及び組織学的研究 (2014)
  • 著者名/発表者名: 三島弘幸，門田理佳，服部淳彦，鈴木信雄，筧 光男，松本 敬，里村一人，見明康雄
  • 学会等名: 第119回日本解剖学会
  • 発表場所: 自治医科大学
  • 年月日: 20140327-20140329
• [学会発表] 新規メラトニン誘導体の骨代謝に対する作用：魚類及び哺乳類におけるin vivoの解析 (2014)
  • 著者名/発表者名: 鈴木信雄，関口俊男，帖地 藍，山本 樹，上西篤志，関 あずさ，高垣裕子，池亀美華，田渕圭章，近藤 隆，北村敬一郎，清水宣明，矢野幸子，染井正徳，服部淳彦
  • 学会等名: 平成25年度日本動物学会中部支部例会
  • 発表場所: 愛知県
  • 年月日: 20140308-20140309
• [学会発表] 新規メラトニン誘導体の魚類の骨代謝に対する作用 (2013)
  • 著者名/発表者名: 帖地 藍，谷内口孝治，田渕圭章，近藤 隆，北村敬一郎，清水宣明，関口俊男，矢野幸子，服部淳彦，鈴木信雄
  • 学会等名: 第38回日本比較内分泌学会大会
  • 発表場所: 宮崎大学
  • 年月日: 20131024-20131026
• [学会発表] 骨モデル（魚のウロコ）に対する放射線とメラトニンの影響 (2013)
  • 著者名/発表者名: 上西篤志，丸山雄介，中野真樹，松本謙一郎，大森克徳，田渕圭章，和田重人，近藤 隆，遠藤雅人，北村敬一郎，早川和一，矢野幸子，清水宣明，関口俊男，服部淳彦，鈴木信雄
  • 学会等名: 第38回日本比較内分泌学会大会
  • 発表場所: 宮崎大学
  • 年月日: 20131024-20131026
• [学会発表] キンギョを用いた糖尿病様モデルのインスリン産生能の解析 (2013)
  • 著者名/発表者名: 北村敬一郎，安藤 忠，桶作若菜，遠藤雅人，服部淳彦，鈴木信雄
  • 学会等名: 第38回日本比較内分泌学会大会
  • 発表場所: 宮崎大学
  • 年月日: 20131024-20131026
• [学会発表] アオゴカイ（環形動物）におけるメラトニンの同定 (2013)
  • 著者名/発表者名: 新田沙織，関口俊男，金澤直子，海老原充，服部淳彦，鈴木信雄
  • 学会等名: 第38回日本比較内分泌学会大会
  • 発表場所: 宮崎大学
  • 年月日: 20131024-20131026
• [学会発表] 擬似微小重力に対する骨モデル（ウロコ）の破骨細胞及び骨芽細胞の応答解析 (2013)
  • 著者名/発表者名: 山本 樹，池亀美華，田渕圭章，矢野幸子，遠藤雅人，近藤 隆，中野真樹，北村敬一郎，関口俊男，清水宣明，服部淳彦，鈴木信雄
  • 学会等名: 第38回日本比較内分泌学会大会
  • 発表場所: 宮崎大学
  • 年月日: 20131024-20131026
• [学会発表] 多環芳香族炭化水素類の魚類の骨代謝に対する作用 (2013)
  • 著者名/発表者名: 表 俊樹，川部季美，北村敬一郎，服部淳彦，田渕圭章，近藤 隆，鳥羽 陽，早川和一，鈴木信雄
  • 学会等名: 第38回日本比較内分泌学会大会
  • 発表場所: 宮崎大学
  • 年月日: 20131024-20131026
• [学会発表] 新規メラトニン誘導体の卵巣摘出ラットに対する作用 (2013)
  • 著者名/発表者名: 関口俊男，帖地 藍，関あずさ，高垣裕子，池亀美華，田渕圭章，近藤 隆，北村敬一郎，清水宣明，矢野幸子，服部淳彦，鈴木信雄
  • 学会等名: 第38回日本比較内分泌学会大会
  • 発表場所: 宮崎大学
  • 年月日: 20131024-20131026
• [学会発表] ヒトおよびニワトリ骨組織におけるメラトニン受容体の発現と局在 (2013)
  • 著者名/発表者名: 中野真樹，池亀美華，山本智章，服部淳彦
  • 学会等名: 第84回日本動物学会
  • 発表場所: 岡山大学
  • 年月日: 20130926-20130928
• [学会発表] キンギョの再生鱗における時計遺伝子と骨芽細胞関連遺伝子の発現 (2013)
  • 著者名/発表者名: 赤塚涼佑，黒田美翔，丸山雄介，鈴木信雄，服部淳彦
  • 学会等名: 第84回日本動物学会
  • 発表場所: 岡山大学
  • 年月日: 20130926-20130928
• [学会発表] 微小重力におけるウロコの破骨細胞の応答 (2013)
  • 著者名/発表者名: 鈴木信雄，池亀美華，山本 樹，北村敬一郎，田渕圭章，矢野幸子，服部淳彦
  • 学会等名: 第84回日本動物学会
  • 発表場所: 岡山大学
  • 年月日: 20130926-20130928
• [学会発表] ポリ塩化ビフェニル（PCB118）は魚の骨代謝を攪乱する (2013)
  • 著者名/発表者名: 谷内口孝治，関口俊男，羽賀雄紀，松村千里，鶴川正寛，中野武，北村敬一郎，鳥羽陽，早川和一，近藤隆，田渕圭章，和田重人，遠藤雅人，服部淳彦，鈴木信雄
  • 学会等名: 第84回日本動物学会
  • 発表場所: 岡山大学
  • 年月日: 20130926-20130928
• [学会発表] フタホシコオロギの加齢性記憶障害における飼育環境の影響 (2013)
  • 著者名/発表者名: 松本幸久，松本‐佐藤千尋，中野真樹，服部淳彦，水波誠
  • 学会等名: 第84回日本動物学会
  • 発表場所: 岡山大学
  • 年月日: 20130926-20130928
• [学会発表] キンギョウロコのアパタイトの解析－赤外ラマン分光によるアプローチ (2013)
  • 著者名/発表者名: 奈良雅之，服部淳彦，大西晃宏，赤塚陽子，矢野幸子，鈴木信雄，松田准一
  • 学会等名: 第22回日本バイオイメージング学会
  • 発表場所: 東京大学
  • 年月日: 20130914-20130916
• [学会発表] 「宇宙メラトニン研究」の目的と今後の展開 (2013)
  • 著者名/発表者名: 服部淳彦
  • 学会等名: 第３回宇宙メラトニン研究会
  • 発表場所: 金沢大学
  • 年月日: 20130819-20130820
  • 招待講演
• [学会発表] Neuroendocrine control of semilunar-synchronized spawning migration in grass puffer. (2013)
  • 著者名/発表者名: Hironori Ando, Md. Shahjahan, Satoshi Ogawa, Atsuhiko Hattori, Kazuyoshi Tsutsui, Ishwar Parhar
  • 学会等名: 17th International Congress of Comparative Endocrinology
  • 発表場所: Barcelona, Spain
  • 年月日: 20130715-20130719
• [学会発表] 象牙質の成長線形成と体内時計の情報伝達分子メラトニンの関連 (2013)
  • 著者名/発表者名: 三島弘幸，門田理佳，井上昌子，.服部淳彦，.鈴木信雄，田畑 純，寛 光夫，松本 敬，里村一人，見明康雄
  • 学会等名: 第31回化石研究会総会・学術大会
  • 発表場所: 下仁田町文化ホール
  • 年月日: 20130601-20130602
• [学会発表] メラトニンと骨粗鬆症 (2013)
  • 著者名/発表者名: 服部淳彦
  • 学会等名: 第86回日本内分泌学会学術総会
  • 発表場所: 仙台国際センター
  • 年月日: 20130425-20130427
  • 招待講演
• [学会発表] メラトニン－基礎研究より－
  • 著者名/発表者名: 服部淳彦
  • 学会等名: 第5回抗加齢内分泌研究会
  • 発表場所: 立教大学
  • 招待講演
• [学会発表] 新規メラトニン誘導体－骨粗鬆症の治療に向けて
  • 著者名/発表者名: 鈴木信雄，関 あずさ，関口俊男，染井正徳，高垣裕子，矢野幸子，服部淳彦
  • 学会等名: 第5回抗加齢内分泌研究会
  • 発表場所: 立教大学
• [学会発表] 魚のウロコを用いた宇宙実験
  • 著者名/発表者名: 鈴木信雄，矢野幸子，服部淳彦
  • 学会等名: 第84回日本動物学会 動物学のひろば
  • 発表場所: 玉野海洋博物館
• [学会発表] 象牙質の成長線形成とサーカディアンリズム同調因子メラトニンの関係
  • 著者名/発表者名: 三島弘幸，門田理佳，井上昌子，服部淳彦，鈴木信雄，寛 光男，松本 敬，里村一人，見明康夫
  • 学会等名: バイオミネラリゼーション研究会
  • 発表場所: 東京大学
• [図書] Sexual Plasticity and Gametogenesis in Fishes (2013)
  • 著者名/発表者名: Ando, H., Ikegami, T., Maruyama, Y. Shahjahan, Md. and Hattori, A.
  • 総ページ数: 470 (17-29)
  • 出版者: Nova Science Publishers, Inc.