研究課題
基盤研究(C)
クサフグにおける半月周性産卵リズムの形成機構を解明するため,本研究課題では,半月周リズムに重要な役割を持つと考えられる松果体の15時間周期の新しい体内リズムの発振機構について解析を行う。平成24年度に行った研究の実績は,次の1)~4)である。1)松果体で15時間周期の発現リズムを持つメラトニン受容体(MelR)遺伝子の周期的転写調節機構を解析するために必要な松果体の分子マーカー,Otx5遺伝子について,ホールマウントin situハイブリダイゼーション法を用いてクサフグ胚における発現を解析した。Otx5aとOtx5bの両遺伝子はクサフグ胚において,松果体特異的に発現していた。また,Otx5遺伝子の発現が松果体で日周および概日変動するのかを検討するために,クサフグ稚魚を明暗条件下および恒暗条件下で飼育し,3時間ごとに9回サンプリングした。2)クサフグを人工授精して,胚から成体までの飼育条件を確立した。クサフグ胚および稚魚を用いた遺伝子発現の解析に必要な実験材料が調達可能になった。3)松果体にある概日時計を構成する時計遺伝子の一つと考えられるクリプトクローム(Cry)遺伝子ファミリーをクローニングした。クサフグには,Cry1,Cry2,Cry3,光修復酵素(Phr)の4種類の遺伝子が存在し,これらの遺伝子はクサフグの成体で網膜を除く脳神経組織,各種の末梢組織で広く発現していた。また,Cry3遺伝子の発現は,間脳で日周変動することが明らかになった。4)九州の産卵場で採集したクサフグを佐渡臨海実験所に輸送し,水位一定/明暗条件で飼育した。行動をビデオ観察し,産卵期の大潮の前に魚が水槽内に作った斜面に集合することを確認した。
3: やや遅れている
計画から遅れている部分として,松果体におけるMelR遺伝子とOtx5遺伝子の発現解析について, MelR遺伝子の5’上流域のクローニングと周期的転写調節機構解析用DNAコンストラクトの作製がある。また,Otx5遺伝子の5’上流域をGFP遺伝子につないだDNAコンストラクトの作製も進行中である。また,メラトニン測定系については,松果体初代培養系からのメラトニン分泌量の測定系をすでに確立しているが,血液中のメラトニンの測定については血液の抽出方法を検討中である。一方で,計画より進んでいる部分として,Cry遺伝子ファミリーの内,Cry3遺伝子の発現が間脳で日周変動することが明らかになった点が挙げられる。
計画より遅れている部分について,周期的遺伝子発現解析用のDNAコンストラクトの作製を進める。MelR遺伝子とOtx5遺伝子の5’上流域のクローニングは,トラフグゲノム情報を基にして速やかに行うことができると考えている。また,クサフグの胚と稚魚を多数,調達することが可能になり,胚と稚魚における松果体の機能の解析を推進する。特に,MelR,Otx5,Cry,そしてPeriod遺伝子の周期的な発現を解析する。水槽内での行動解析については,恒暗条件下での行動パターンを解析する。
当初の計画通りに使用する。
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 10件) 学会発表 (24件) 備考 (1件)
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