研究課題
クサフグにおける半月周性産卵リズムの形成機構を解明するため、松果体に存在すると考えられる15時間周期の新しい体内リズムの発振機構について解析を行った。平成26年度に得られた結果は、次の1)~4)である。1)クリプトクローム(Cry)は、脊椎動物において概日時計を構成する分子の一つである。これまでにクサフグの4種類のCry遺伝子のうち、Cry1とCry3の遺伝子発現が間脳で日周及び概日変動することを明らかにし、クサフグでもCryが概日時計遺伝子の一つとして機能することを示唆した。平成26年度では、Cryの月周リズムの発振への関与を明らかにするため、産卵期にクサフグの間脳を同時刻に4日ごとに7回採集して、月齢に伴ったCry遺伝子発現量の変化を解析した。その結果、Cry1とCry3共に、満月の日にピークを持つ月周変動を示すことが明らかになり、Cryが月齢を測る分子機構に重要な役割を持つことが示唆された。2)MelR遺伝子のプロモーター解析用のDNAコンストラクトを作成した。3)クサフグ仔魚の松果体におけるメラトニン受容体(MelR)、松果体特異的転写因子Otx5、Cryの各遺伝子の周期的発現の解析用に、仔魚を明暗条件下および恒暗条件下で飼育し,3時間ごとに9回サンプリングした。4)次世代シークエンサーによるクサフグ松果体のRNAシークエンス解析を行うために、成熟魚を採集、飼育して一定時間ごとに松果体を採集し、トータルRNAを調製した。
3: やや遅れている
計画から遅れている部分として,クサフグの受精卵を用いたMelR遺伝子のプロモーター解析を平成26年度に予定していたが、必要な量の受精卵を入手できず、実施できなかった。受精卵は、5-7月の産卵期の限られた日に野外の産卵場に集まる魚を採集して用いるが、天候不順によって十分な数の魚を採集することができなかった。また同様の理由から、成熟魚の松果体のトータルRNA試料を十分量調製することができなかったため、RNAシークエンス解析を実施できなかった。H27年度に産卵魚の採集地点を増やして、十分な量の受精卵および松果体を確保し、両解析を実施する。一方で,計画より進んでいる部分として,概日時計の構成分子として機能していると考えられるCryが月齢に応じた遺伝子発現変動を示すことが明らかになり、中枢概日時計が月周を刻む時計として機能することが示唆された点が挙げられる。
計画より遅れている部分について、産卵魚の採集地点を増やして、十分な数の産卵魚を採集し、MelR遺伝子のプロモーター解析と松果体のRNAシークエンス解析を実施する。また、クサフグの胚を成体まで飼育し、胚から成体までのMelR、Otx5、Cryの各遺伝子の周期的発現を明らかにする。さらに、最終年度として本研究課題の成果をまとめる。
H26年度に、クサフグの受精卵を用いたMelR遺伝子のプロモーター解析と成熟魚の松果体を用いたmRNAシークエンスを予定していたが、天候不順により必要な数の実験魚を野外で入手することができず、解析を実施することができなかった。そのため、助成金が生じると共に、実施期間をH27年度まで延長した。
助成金は、MelR遺伝子のプロモーター解析と松果体のRNAシークエンスに必要な実験魚の採集のための旅費、プロモーター解析用試薬の購入、松果体のmRNAの調製用試薬・キットの購入、および研究成果の発表のため国内旅費に使用する。
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