研究課題/領域番号 |
24570070
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
濱口 哲 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20126444)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 性決定 / 性分化 / メダカ / Dmy / Gsdf / 野生 / 突然変異 |
研究概要 |
メダカの性はY染色体上にあるDmyの発現により雄分化カスケードが発動すれば雄に、Dmyを欠けば、雄分化カスケードは発動せず雌に分化することが知られている。Dmyの下流でシグナル分子であるGsdfが雄分化カスケードの発動に必須な役割を果たしていることは明らかになっているが、それ以外にどのような遺伝子が関わっているかは未だ明らかではない。本研究は、野生集団中に見出された仙台産XY*雌が、どのようにして雄への分化経路を逸脱して雌に分化するのかを明らかにすることにより、新たな性決定/性分化関連遺伝子の同定を目指すものである。 仙台XY*では雌雄両者が出現することから、Dmyが完全に機能を失っていない変異であると考えられており、これまでの研究ではその発現低下は認められないこと、Y*Y*個体にも性転換個体が出現することから、その原因はDmyタンパク質の致命的な変異や単純な発現低下ではないと推定されてきている。 平成24年度は、原因遺伝子のマッピングのための準備として、HNI系統との交配で得られたF3世代のXY*♀とY*Y*雄との交配から得られたF4個体の解析を行った。その結果、XY*個体およびY*Y*個体では雌雄がおおよそ同数出現することが確認された。さらに、F4世代個体の生殖巣の発生過程の組織学的解析から、XY*個体はふ化後5日目では既に雌方向に分化を始めており、その後ふ化後30日までに明確に雄に分化する個体と雌に分化する個体が区別できることが明らかになった。つまり、この性転換に関わる原因因子は性決定/性分化の極めて初期過程に関わっていると推定された。雄分化に関わる遺伝子の発現状況を孵化0日で確認を試みたところ、過去の結果と異なり、Dmy、Gsdfともにほとんど発現が認められないことが判明した。今後、さらに発生過程の解析を進めるとともに、連鎖解析により原因遺伝子を探索を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度には、連鎖解析により原因遺伝子の存在する染色体(連鎖群)の特定を行う予定であったが、交配の過程で性転換の状況が予期したものより不安定な形質を示したので、連鎖解析に必要な性転換個体数を確保することができず、連鎖群の特定には至らなかった。従って、計画から見ると若干遅れていると判断せざるを得ない。しかし、その後、性転換個体が安定して出現する系統が確保できつつあり、25年度には連鎖群について或る程度の目処を付けることができるものと考えている。また、性転換過程の解析が進み、Dmyの発現低下による性転換を引きおこすことが知られている新潟市白根産のXY雌系統との比較検討を行い、両者の性転換過程は異なっていることが示唆されている。それらの性分化過程の分子発生学的解析から、この性転換の"特徴"をさらに明確にできることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度で新たに確立した安定して性転換個体(XY*雌、Y*Y*雌)を生じる系統を用いて、改めてHNI系統との交配を行い連鎖解析により、原因因子(sendai)の所在の探索を行う。併せて、XY*系統で、RT-PCRおよびin situ hybridization法により、既知の性分化関連遺伝子の発現解析を行い、この性転換が雄分化のどの段階で正常発生過程を逸脱すのかを詳細に検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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