研究課題/領域番号 |
24570070
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
濱口 哲 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20126444)
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キーワード | メダカ / 性決定 / 性分化 / 野生個体 / 性転換 |
研究概要 |
メダカの性決定機構については、2002年に雄決定カスケードの引金を引くと思われる遺伝子Dmyが発見されたが、その性決定カスケードの詳細は未だ未解明である。本研究では、野生メダカの性転換個体の原因遺伝子を同定することにより、性決定カスケードを構成している遺伝子の同定を目指している。本年度は、新潟市白根由来のXY雌及び長崎県平戸由来のXX雄の原因遺伝子について検討した。 白根XY雌についてはこれまでの研究から、白根で見つかった性転換個体に由来するDmy*と4番染色体上の遺伝子Sda-2の関与が示唆されてきた。本研究では、両遺伝子の片方を持つ個体と両者を持つ個体の性分化過程を解析して、性転換には両者が共存することが必須であることを明らかにした。また、Dmyおよび(Dmyの下流で働くと考えられている)Gsdfの発現解析から、Sda-2はDmy*に直接作用して、その発現を低下させ、さらにGsdfの発現低下を引き起こすことにより、性転換させることが示唆された。 一方、平戸XX雄については、HNI Kaga、HNIの3つの近交系雌との交配でえられたF1のいずれでもXX雄が出現したことから、この性転換は優性の変異により生じたものであることが判明した。さらに、平戸XX系統の性分化過程の組織学的観察から、この性転換は性分化初期過程から雄方向に分化する、つまり、この原因遺伝子は性決定の初期段階で働いているものであることが明らかになった。さらに、HNI系統で、F1雄と近交系雌との交配からBC1雄27個体を得た。そのうちの16個体を用い、メダカの各染色体上の遺伝子マーカー、43を用いて連鎖解析をおこなったところ、12番染色体上の特定領域のマーカーが雄と完全連鎖することが判明した。 今後、両者について、さらに遺伝子の特定を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究で、Dmyの存在下でXY雌の出現に関与すると思われる遺伝子(Sda-2)と、Dmyなしで雄に分化させる遺伝子の存在に迫ることが出来ている。前者については、特定の変異を持つ白根由来のDmyの働いてその発現量を低下させることにより,XY雌を誘導、後者については優性で雄分化を誘導する遺伝子であることが判明している。両者ともに、雄決定カスケードに関わる遺伝子の実態に迫る可能性がある変異であり、その実態にさらに迫ることにより、雄決定カスケードに関わる遺伝子を見いだす可能性は十分にあることから、ある程度、初期の目標に近づきつつあると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
前者については、Dmy、Gsdfの発現量について、定量PCR(リアルタイムPCR)により評価して、Dmy発現の低下について確認する。また、4番染色体上に存在するSda-2について、さらに詳細な連鎖解析を行い、染色体上の位置を特定し、原因遺伝子の特定を目指す。 後者についても、詳細な連鎖解析により、原因遺伝子領域の絞り込みを行う。ただ、この領域にはこれまでの研究からメダカの性決定に関わると見なされている遺伝子が存在している。したがって、その当該遺伝子が性転換と連鎖しているかを確認するとともに、ORFおよび上流、下流を含め、ヌクレオチド配列を調べ、変異の有無を検討するとともに、その発現動態を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
予算を使用して順調に研究活動を遂行したが、年度末で若干の使用残が生じたものである。 残金については、平成26年度の助成金と合わせて使用する。平成26年度も、主として物品費として使用するが、総額の10%程度は研究成果発表、研究情報交換のための旅費として支出することになる。
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