研究課題
1991年にメダカ性決定遺伝子Dmyを発見して以来、Dmyに始まる性(雄)決定カスケードの解明の研究を進めている。野生メダカに見いだされるDmyを持たない雄(XX♂)、Dmyを持つ雌(XY♀)の原因遺伝子を同定すればそれがメダカの性決定関連遺伝子、つまり性決定カスケードの関わる遺伝子であるという前提で、野生性転換個体の探索とその原因遺伝子の究明を進めてきた。本年は、仙台市由来のXY♀、長崎県平戸由来のXX♂について検討し、以下の成果を得た。①仙台XY*♀を近交系HdrR系統♂に交配して得たF1ではXY*♂、XY*♀の両方が得られたが、XY*♀を9~10世代にわたって近交系HdrR♂に戻し交配した場合、XY*個体のほぼ100%が雌になる一方、XY*♂をHdrR♀に9~10世代戻し交配を継続した場合は、XY*個体の約半数が雌に約半数が雄になり、XY*♀を交配し続けた場合とは♀の出現率が異なることが分かった。9~10世代戻し交配を継続した場合、Dmy以外の染色体領域はHdrRと置き代わっていると推定されるので、♀出現の原因はDmyそのものである可能性が高いことが示唆されるが、XY♀とXY♂を継代した場合で性比が異なる原因について現在検討中である。②昨年までに、平戸XX♂の原因遺伝子は12番染色体のGsdfである可能性が高いことが示唆されたが、このGsdfのアミノ酸コード配列は正常と違いがないこと、性分化時期にDmy無しで高い発現を示すこと、上流の発現制御領域の配列に違いがあることが判明し、平戸XXはGsdfの上流部の突然変異による自律的高発現が原因で雄が出現すると推定された。この変化は、ルソンメダカで新規の性決定遺伝子が出現した過程とほぼ同じであり、メダカ属魚類での性決定遺伝子の多様性の原因を検討する上で、興味深い知見である。
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Nature Communications
巻: 5 ページ: 1-10
10,1038/ncomms5157