研究課題/領域番号 |
24570071
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
奥田 一雄 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (40152417)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | サンゴ / 褐虫藻 / 細胞共生 / 微細形態 |
研究概要 |
本研究目的はサンゴ-褐虫藻の共生系の成立、維持、破綻における微細形態を明らかにすることである。初年度では、サンゴおよび褐虫藻の細胞・組織を適切に保存する種々の固定法を検討し、サンゴ組織中の褐虫藻の共生部位と共生構造を明らかにし、サンゴ細胞内で分裂する褐虫藻の微細構造の変化について新たな知見を得た。 過マンガン酸カリウム固定法により、褐虫藻がサンゴの胃層細胞内のみに限定して共生することが明らかになった。急速凍結置換固定では、共生褐虫藻は、原形質膜の内側に微小管で裏打ちされた扁平な小胞(アンフィエスマ小胞)が分布する渦鞭毛藻類特有の細胞外被をもつが,原形質膜の外側には,褐虫藻細胞を取り囲む連続する2 枚の膜様構造(外側から膜様構造1,膜様構造2)が存在し、それら膜様構造1と2の間に膜断片の積層構造が所々で観察された。さらに、膜様構造1はサンゴの食胞膜由来と考えられる生体膜であるのに対し,膜様構造2は生体膜ではないことがフリーズフラクチャー法によって明らかになった。サンゴ細胞内で褐虫藻が細胞分裂するとき、褐虫藻の細胞質分裂が完了後,膜様構造2が細胞質分裂面に向かって貫入してそれぞれの娘細胞を取り囲んだ。その後,膜様構造1が分裂面に向かって貫入し始め,最終的に,膜様構造1および2に囲まれた2つの娘細胞が1つのサンゴ細胞の中に存在した。褐虫藻を取り囲む膜様構造が狭窄・分離することが共生褐虫藻の細胞分裂に特有の現象であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サンゴ-褐虫藻の共生系の成立、維持、破綻における微細形態を明らかにするための電子顕微鏡固定法を確立したこと。初年度目的の1つであるサンゴ細胞中における褐虫藻の共生部位および共生構造を明らかにしたこと。サンゴ-褐虫藻の共生系が維持されるために必須と考えられるメカニズムの1つとして、サンゴ細胞中における共生褐虫藻の細胞分裂の過程の一部を明らかにしたこと。これらの研究結果により、計画研究全般にわたる研究方法と実験系が整い、また、新たに明らかにすべき課題が明確になり、次年度以降に計画された研究を遅延なく実行できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、サンゴ-褐虫藻の共生系の維持機構のうち褐虫藻のサンゴ細胞への分配のメカニズムを明らかにする研究に取り組む。そのためにはサンゴ細胞が頻繁に分裂する段階を観察する必要がある。褐虫藻が垂直伝搬する種を用い、プラヌラ幼生期を材料として急速凍結置換固定法とフリーズフラクチャー法を駆使する。もう1つは、サンゴ-褐虫藻の共生系の成立に関し、放卵・放精後のサンゴの受精卵の発生過程において、外界で自由生活する褐虫藻を細胞内共生させるメカニズムを明らかにする研究に取り組む。これには褐虫藻が水平伝搬する種を用いる。上記2つの研究のための試料の固定は初夏から夏に起こるサンゴの成熟期に黒潮生物研究所の協力を得て集中して行う。さらに、サンゴ-褐虫藻の共生系の破綻のメカニズムを明らかにする実験系を検討する。野外で採集したサンゴを実験室の水槽で飼育し、高温や赤色光によるストレスの影響を、まずは生理学的に明らかにする実験に取り組む。それまでの研究成果をまとめて国内外で学会発表し、学術論文を作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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