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2013 年度 実施状況報告書

褐虫藻とサンゴの細胞共生の成立・維持・破綻に関する微細形態学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 24570071
研究機関高知大学

研究代表者

奥田 一雄  高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (40152417)

キーワードサンゴ / 褐虫藻 / 細胞共生
研究概要

本研究目的はサンゴ-褐虫藻の共生系の成立、維持、破綻における微細形態を明らかにすることである。前年度では、サンゴ-褐虫藻の共生系が維持される機構として,サンゴ細胞内で分裂する褐虫藻の微細構造の変化を明らかにした。本年度は主にサンゴ-褐虫藻の共生系の破綻の過程に注目し,短時間の高水温処理がサンゴおよび褐虫藻の細胞微細構造に及ぼす影響を明らかにした。
高水温処理によるサンゴ組織の微細構造変化には2つの様式があった。1つはサンゴ外側の皮層組織(褐虫藻と共生しないサンゴ組織)の空胞化に続いて内側の胃層組織(褐虫藻と共生するサンゴ組織)が崩壊する様式であり,高水温処理後数時間で,まず皮層細胞に液胞が出現した。液胞は皮層細胞のほとんどの体積を占めるほどに拡大し,それに伴って細胞小器官が崩壊し,皮層細胞は細胞周縁部にのみ薄い細胞質が分布する空胞化した形態になった。その結果,皮層組織は薄い細胞質が網目のようにつながったスポンジ状の構造を呈した。その後,細胞の空胞化は胃層組織に進行したが,空胞化は褐虫藻を含まない胃層細胞で顕著であった。褐虫藻を含む胃層細胞は周りの空胞化した胃層組織から脱落した。高水温処理によるサンゴ組織の微細構造変化のもう1つの様式では,皮層組織は影響を受けず,胃層組織が崩壊した。高水温処理後数十分で,褐虫藻を含まない胃層細胞に電子密度の高い物質を含む多胞体が多数現れ,多胞体をもつ細胞の細胞質のほとんどは消化された。細胞質が消化された細胞が崩壊し,隣接していた細胞組織が断片化した結果,褐虫藻を含む胃層細胞が胃層組織から脱落した。2つの様式ともに,褐虫藻の細胞微細構造の変化は観察されなかった。短時間の高水温処理は褐虫藻を含まないサンゴ細胞の空胞化または崩壊を誘導し,それによってサンゴ-褐虫藻の共生系の破綻をもたらすことが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

サンゴ-褐虫藻の共生系の成立、維持、破綻における微細形態を明らかにするための電子顕微鏡固定法を確立したこと。サンゴ細胞中における褐虫藻の共生部位および共生構造を明らかにしたこと。サンゴ-褐虫藻の共生系が維持されるために必須と考えられるメカニズムの1つとして、サンゴ細胞中における共生褐虫藻の細胞分裂の過程の一部を明らかにしたこと。褐虫藻を含まないサンゴ細胞の崩壊が高水温処理後早期に始まり,サンゴ-褐虫藻の共生系の破綻を導くことを明らかにしたこと。このように,計画研究全般にわたる研究方法と実験系が整い、それによって共生系の維持と破綻の2点の問題を明らかにしてきており、最終年度に取り組むべき研究を遅延なく実行できるから。

今後の研究の推進方策

最終年度では、サンゴ-褐虫藻の共生系の成立機構を明らかにする研究に取り組む。1つは褐虫藻を垂直伝搬する種を用い、卵細胞形成期における親から子への褐虫藻の分配過程を狙う。もう1つは褐虫藻を水平伝搬する種を用い,受精卵から発生したプラヌラ幼生が外界で自由生活する褐虫藻を取り込み,細胞共生させる過程を狙う。これらの試料の固定は初夏から夏に起こるサンゴの成熟期に黒潮生物研究所の協力を得て集中して行う。また,初年次に取り組んだサンゴ細胞内での褐虫藻の細胞分裂に関する研究をさらに進める。サンゴ細胞内で分裂した2つの褐虫藻はそのサンゴ細胞が分裂するときにどのように嬢細胞へ分配されるかを明らかにしたい。そのために,活発に細胞分裂するプラヌラ幼生または人為的に誘導したサンゴの再生組織を用いる。これらの研究結果と併せ,サンゴ-褐虫藻の共生系の成立,維持,破綻を通じて細胞微細構造の変化の全貌をまとめ,その成果を学会および学術論文によって発表する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Molecular cytogenetic analysis of the scleractinian coral Acropora solitaryensis Veron & Wallace 19842014

    • 著者名/発表者名
      Taguchi T, Mezaki T, Iwase F, Sekida S, Kubota S, Fukami H, Okuda K, Shinbo T, Oshima S, Iiguni Y, Testa JR and Tominaga A
    • 雑誌名

      Zoological Science

      巻: 31 ページ: 89-94

    • 査読あり
  • [学会発表] Ribosomal RNA gene mapping and manifestation of sex chromosomes on the scleractinian coral Acropora Solitaryensis Veron & Wallace2014

    • 著者名/発表者名
      Taguchi T, Kubota S, Mezaki T, Sekida S, Okuda K, Tominaga A
    • 学会等名
      10th Asia-Pacific Marine Biotechnology Conference
    • 発表場所
      Taipei, Taiwan
    • 年月日
      20140504-20140508
  • [学会発表] Ultrastructure of cortical and extracellular structures of zooxanthellae during cell division in a coral cell2013

    • 著者名/発表者名
      Sekida S, Okuda K
    • 学会等名
      10th international phycological congress
    • 発表場所
      Orlando, Florida, USA
    • 年月日
      20130804-20130810

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公開日: 2015-05-28  

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