研究課題/領域番号 |
24570074
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
佐藤 友美 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 准教授 (40295506)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 合成エストロゲン / 卵巣 / 環境化学物質 / インヒビン |
研究概要 |
平成24年度は、合成エストロゲンの卵巣に対する直接的、間接的作用を明らかにすることに加え、関連因子の同定を試みた。これまでの研究から、新生仔マウスへの合成エストロゲン投与により、卵巣、膣においてインヒビンの高発現が誘導されることがわかっている。そこで、新生仔期のERβノックアウトマウス卵巣を器官培養し、合成エストロゲン曝露によるアクチビン、インヒビン関連遺伝子発現への影響をリアルタイムRT-PCR法により定量した。その結果、生体内と同様に合成エストロゲン添加により、ERβを介してインヒビン遺伝子の発現量が増加することが明らかとなった。しかし、培養液へインヒビンを添加、またはアクチビン受容体拮抗剤を添加後、正常マウス腎皮膜下に移植しても多卵性卵胞は誘導されなかったことから、インヒビンの高発現と、合成エストロゲン曝露による多卵性卵胞の誘導との関係は不明である。 一方、合成エストロゲン投与により卵巣内の多くの遺伝子発現が変化すると考えられるが、その候補の一つであるNotchシグナルについて、器官培養系を用いてその役割を調べた。その結果、Notchシグナルを阻害すると前顆粒膜細胞の増殖が抑制されるが、合成エストロゲン添加では変化はなかった。 一方、新生仔期の性ホルモン、環境化学物質投与がマウス視床下部-脳下垂体-生殖腺軸に与える影響を個体レベルで理解するために、合成エストロゲンを新生仔期マウスに投与し、視床下部-脳下垂体-生殖腺における遺伝子発現の網羅的解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新生仔期の性ホルモン、環境化学物質投与がマウス視床下部-脳下垂体-生殖腺軸に与える影響を個体レベルで理解するために、エストロゲン受容体α、βそれぞれを介した作用を、各器官ごとに網羅的に解析する研究に関しては、現在、解析中である。 一方、脳下垂体、卵巣の器官培養系に環境化学物質を添加し、in vitroでの形態的変化、遺伝子発現変化を調べる研究に関しては、卵巣ではNotchシグナル系、脳下垂体では、性腺刺激ホルモン遺伝子に関して実験を行っており、それぞれ間接的、直接的作用が示唆されるような結果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、新生仔期の性ホルモン、環境化学物質投与がマウス視床下部-脳下垂体-生殖腺軸に与える影響を個体レベルで理解するために、合成エストロゲンを新生仔期マウスに投与し、視床下部-脳下垂体-生殖腺における遺伝子発現の網羅的解析を行う。候補遺伝子群については、ERαまたはERβノックアウトマウス新生仔を用いることにより、視床下部および卵巣において、ERα、ERβそれぞれを介した遺伝子発現変化を明らかにする。 卵巣において、合成エストロゲン投与によりインヒビンの高発現が引き起こされるが、インヒビン曝露では多卵性卵胞は誘導されなかった。この原因を明らかにするため、合成エストロゲンを投与されたマウス卵巣におけるインヒビン遺伝子のプロモーター領域のDNAメチル化状態への影響を調べ、エピジェネティックな恒久的調節作用の有無を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き物品、消耗品の購入に充てる。 消耗品は、動物飼育、遺伝子解析、器官培養に用いる。
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