平成26年度は、合成エストロゲン(DES)の濾胞形成に対する直接的影響を調べるために、器官培養系を用いてNotchシグナリングおよびHHシグナリングの役割と両者の関係性を調べた。これらのシグナリングを阻害すると多卵性卵胞が誘導されることが報告されているが、DESとの関連は不明であった。器官培養した新生仔マウス卵巣にDESを添加してNotchシグナリングおよびHHシグナリングの活性化を調べたところ、有意な遺伝子発現変化は認められなかった。一方、Notchシグナリング阻害剤添加では多卵性卵胞は誘導されなかったが、HHシグナリングの阻害剤添加により多卵性卵胞は有意に誘導された。以上の結果から、DESの下流にNotchシグナリングおよびHHシグナリングが存在する可能性は低いが、HHシグナリングは独自の経路によって多卵性卵胞を誘導することが分かった。さらに、これまでの研究によりDESにより遺伝子発現が増加するインヒビンalpha鎖の変化も調べ、3つのシグナル経路の相関性を調べた。また、その他の多卵性卵胞誘導に関与する因子を探索するために、遺伝子発現の網羅的解析を行った。 一方、卵巣のステロイド合成に関する酵素の発現調節機構を調べるために、卵巣莢膜細胞および顆粒膜細胞の初代培養系を確立し、莢膜細胞における脳下垂体ホルモンによるステロイド合成関連遺伝子の発現変化をin vivoとin vitroの両方で解析して違いを明らかにした。
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