研究課題/領域番号 |
24570075
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研究機関 | いわき明星大学 |
研究代表者 |
岩田 惠理 いわき明星大学, 科学技術学部, 教授 (70382786)
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研究分担者 |
大久保 範聡 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (10370131)
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キーワード | 比較内分泌 / 性分化 |
研究概要 |
前年度の研究結果より、エストラジオール(女性ホルモン)の経口投与により未成熟カクレクマノミの攻撃性が上昇することが明らかとなった。そこで今年度はメチルテストステロン(男性ホルモン)およびコルチゾール(ストレスホルモン)を同様の方法で投与し、攻撃性を評価したところ、いずれも対照群と比較して攻撃性の上昇は認められなかった。 攻撃性の上昇したエストラジオール投与群の、脳内レセプターをコードする遺伝子の転写活性を対照群と比較した。比較を行ったのは、魚類の社会行動の発現に関与すると言われるアルギニンバソトシンレセプター(AVTR)およびイソトシンレセプター(ITR)遺伝子である。その結果、AVTRのサブタイプ3種の遺伝子の転写活性がエストラジオールによって抑制されたことが明らかとなった。 前年度に引き続きカクレクマノミの性分化に関与するとされる候補遺伝子、11β-HSD遺伝子とグルココルチコイドレセプター遺伝子の配列決定を行った。グルココルチコイドレセプター遺伝子については全長配列を決定し、11β-HSD遺伝子については5’側に500bpほど残した1500bpの配列を決定し、DDBJへの登録を行った。 性成熟に達したカクレクマノミの雌雄を使用し、パートナー選好性の実験を行った。ペアリング後産卵に至ったペアと、そうでないペアとの行動特性と内分泌環境の比較を行った。その結果、産卵に至ったペアでは雌が雄のシェルター利用を許容しており、雌雄ともにシェルターに入っている時間も有意に長かった。また、繁殖に至らなかったペアの雄に、若干の性成熟抑制が認められた。以上のことから、カクレクマノミの雌には明らかなパートナー選好性が存在し、気に入らないオスの性成熟を、何らかの方法で抑制している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験を担当していた院生が双極性障害を発症してしまい、一時的に研究がストップしてしまった。現在リスタートをかけている最中である。 未成熟個体を飼育し、性分化の誘導プロセスを観察してゆく実験がいまだ未着手である。今年度の早いうちに開始したい。
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今後の研究の推進方策 |
攻撃性の評価が終了している未成熟クマノミの、コルチゾール、およびメチルテストステロン投与群の脳内遺伝子の転写活性を検証する。 未成熟個体を3匹1組で飼育し、性分化の誘導プロセスを観察してゆく実験を開始する。 パートナー選好性の実験については、ペアを交換すると雄の性成熟抑制が解除されて産卵に至るか否かの検証を行う。
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