研究課題/領域番号 |
24570076
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
馬場 美鈴 工学院大学, 付置研究所, 研究員 (80435528)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 電子線トモグラフィ / 電子顕微鏡 / ニューラルネットワーク / 急速凍結置換法 |
研究概要 |
電子顕微鏡による生体内の膜動態解析に、電子線トモグラフィ法は有益な手段である。しかし、生物構造体の電子顕微鏡画像は複雑であり、膜構造の追跡など、情報欠落による影響も含めて、セグメンテーションは不可能に近い領域がある。微細な領域の膜動態観察には電顕画像の濃度値を表現可能なvolume renderingによる3次元可視化が必要とされる。この観察手段を実現するために、複合ナノ領域において成功している新規アルゴリズムの新再構成法(情報欠落がないことが最大の利点である)を生物切片へ初めて応用することを目指した。実行するにあたり、必要な要素技術の開発を順次進めている。 1、新たに生物試料を急速凍結置換固定法により作製した。様々な厚みの切片を作り、それを3次元再構成した結果から、切片の厚みは、解像度の点において薄い方が有利であるが、生物学的に得たい情報量が減少するため、連続切片の2軸連続傾斜画像の取得を実行した。 2、濃度諧調の重なりにより像観察に支障をきたすと予測される不必要な情報の排除を試みた。そのための手段として、生物学的情報を学習させることが可能なニューラルネットワークをトモグラフィ解析へ初めて導入した。専門家が必要とする画像を、パターン認識で選択し、3次元再構成断層像から抽出のためのニューラルネットワークのソフトを開発した。他に類がない。膜に付着しているリボソームが識別可能となり、抽出の自動化が進んだ。 3、同時に細胞内小器官の輪郭線抽出の自動化を実行し、まだ完全ではないが、比較的良い精度で抽出が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
連携研究者により、2軸調整の良いソフトが開発されたため(論文発表予定)、位置合わせが非常によくなり、3次元再構成画像の解像度が向上した。 抽出のためのニューラルネットワークのソフトは、連続断層像の3次元状態で抽出可能であり、ユーザーが選択できるように組まれている。細胞内の膜動態を観察するための自動化が視野に入った。連携研究者の新規アルゴリズム、情報欠落がないソフトの開発は順調に改良が進み、このソフトの解析可能な連続濃度諧調の諧調数が増加したことにより、生物構造体への応用を開始する段階に入った。ニューラルネットワークを導入した実際の成果が得られ、ソフト開発が進んだ。個々の計画の成果は着実に前進している。
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今後の研究の推進方策 |
電顕による連続傾斜画像の取得を継続し、3次元再構成像の構築などの実行とその完成度に対する評価を繰り返し、その後のソフトの改良と高性能化、半自動化を進める。 ニューラルネットワークのソフトをさらに改良することにより、構造体の認識の精度を上げ、GUIなどを作り上げ、だれでも簡単に操作できるように進める。 クライオ電顕による連続傾斜画像の取得と、得られた画像への新規ソフト(情報欠落がない新手法)の応用を試みる。電子線損傷と撮影枚数など、様々な技術的問題点を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の繰り越し分は、次年度の物品費に充当する。
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