研究課題/領域番号 |
24570077
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
岩室 祥一 東邦大学, 理学部, 教授 (70221794)
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研究分担者 |
小林 哲也 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (00195794)
菊山 榮 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 名誉教授 (20063638)
蓮沼 至 東邦大学, 理学部, 講師 (40434261)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 生体防御ペプチド / 抗菌ペプチド / catesbeianalectin / ヒストン / ウシガエル / 抗酸化ペプチド |
研究概要 |
本年度の全体的な成果としては,これまで抗菌活性を中心に検証していた生体防御機能に加え,異なる3種類の抗酸化作用測定法の確立や,血球凝集作用の顕微鏡観察法を用いたレクチン作用の簡便かつ高感度のスクリーニング法の確立,さらにマスト細胞へのchemotacticな作用の検出法の確立などを行ない,これらを用いて,ペプチドの多様な生体防御機能の検出を可能としたことが最も大きい。個別の成果としては,①ウシガエルcatesbeianalectinの抗菌活性ならびにマスト細胞脱顆粒活性以外の活性検証とその脳におけるmRNAの発現部位局在解析,②エゾアカガエル新規生体防御ペプチドのcDNAクローニングと合成ペプチドの生理作用の検証,③ヒストンの抗グラム陽性細菌活性のメカニズムの解析,等が挙げられる。①については,ウシガエルのハーダー腺及び脳よりcDNAクローニングにより単離していた catesbeianalectinに,新たに血球凝集促進活性を検出したが,抗酸化作用は検出されなかった。脳におけるcatesbeianalectin mRNAの発現部位の局在解析では,辺縁系に多くシグナルが見られたことから,生理的には抗菌物質として作用することが示唆されたが,一方でimmunomodulatorとしての作用やneurotransmitterとしての機能を有する可能性を残すものであった。②では既知のものに加え,数種類の新規配列をもつペプチドをコードするcDNAを得た。合成した新規ペプチドには抗菌活性は検出できなかったが,抗酸化作用を検出することができた。③においては,高リシン型ヒストンと高アルギニン型ではグラム陽性菌に対する抗菌メカニズムが異なり,前者は細菌膜の表在物質に強く結合することにより増殖抑制を起こすことを,後者は細胞膜破壊を起こすことを,明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
両生類に由来する生体防御ペプチドの多機能性を検証するうえで重要な活性測定系を複数にわたって確立することができた。これらを用いた研究結果も着々と増え,学会発表レベルでは積極的に公表できていることから,当初計画どおりに,順調に研究は進展しているといえる。しかし,これらの成果を学術論文として執筆・公表する作業がやや遅れている点を反省し,このような自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により確立したペプチドの種々の生体防御作用の測定系を用いて,これまでに代表者らが得たペプチドについて,同様の作用を有するかどうかを検証する。また,catesbeianalectinについては細胞毒性や溶血性等を精査し,今後,レクチン様物質としての応用法を模索する。また,脳におけるmRNAの局在から下垂体刺激物質としての可能性が示唆されているので,抗血清を作製し,ペプチドレベルで脳やハーダー腺等での局在を解析するとともに,ウシガエルの下垂体培養細胞を用いて,種々のホルモンの分泌に対する影響を検証する。同一の条件により複数のホルモン分泌への影響を検証することは困難が予測されるので,個別のホルモンに適したアッセイ系を確立する必要性を認識している。さらに,両生類の培養皮膚細胞系を用いて,生体防御ペプチドの遺伝子発現を制御する細菌因子やホルモン等の探索を行う。 並行して,ヒストンの抗菌性に関する詳細な解析も精力を注ぐ。高リシン型ヒストンであるヒストンH2Bはその抗菌活性の発現にプロテアーゼによる分断化が関与していることから,異なるいくつかの内因性および外因性プロテアーゼにより生じるヒストンH2B断片の配列を予測する。この配列をもつペプチドを合成し,これらのペプチドの抗菌活性の測定や抗菌メカニズムの検証を行う。また高アルギニン型ヒストンであるヒストンH3の抗菌タンパク質としての性質に着目し,細菌毒素に応じてヒストンH3の合成を行う培養細胞系の探索を行い,これを用いて,抗菌性ヒストンH3の発現に関わる因子の探索を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の当初計画から用品費約60万円を翌年度使用額として残した理由は,細胞培養に必須であるウシ胎児血清の選定・購入に際し,年度末に1ヶ月程の時間を要したため,翌年度に持ち越したからである。通常,培養細胞に用いるウシ胎児血清は,事前にメーカーからサンプルを入手し,それぞれ使用する細胞の培養に適するものかどうかをチェックするロットチェックを行ってから,同一ロット品を複数本まとめて購入する。血清の価格は1本あたり3~5万円程度と幅があるため,1ダース程度の購入を前提に,前述の金額を残した。次年度の研究費の使用計画としては,カスタム合成ペプチド,各種ヒストン,抗体,実験用試薬,プラスチック器具,等の用品の購入を主な支出用途とし,さらに成果発表のための旅費や投稿論文の英文校正の費用,謝金等の支出が必要となる。
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