研究課題/領域番号 |
24570077
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
岩室 祥一 東邦大学, 理学部, 教授 (70221794)
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研究分担者 |
小林 哲也 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (00195794)
菊山 榮 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 名誉教授 (20063638)
蓮沼 至 東邦大学, 理学部, 講師 (40434261)
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キーワード | 生体防御ペプチド / 抗菌ペプチド / ヒストン / LAH-2細胞 / リュウキュウアカガエル / catesbeianalectin |
研究概要 |
本年度の主な成果として、①近年の研究により抗菌活性の存在が定着したヒストン群タンパク質(ヒストンH1、H2A、H2B、H3、 H4)について、特に代表者等が抗菌活性を初めて報告したヒストンH3に着目し、その発現調節機構の解明を行ったこと、②生体防御ペプチドの新規作用の測定系として大腸菌凝集作用の検出法を確立したこと、③シークエンスキャプチャー法に基づき、リュウキュウアカガエルならびに培養LAH2細胞から新規抗菌ペプチド様配列をもつcDNAを複数得たこと、が挙げられる。①では、ヌクレオソームの構成成分として、本来、細胞核内の物質として知られているヒストンが、皮脂腺由来培養細胞においては培養液中に大腸菌毒素であるリポ多糖や黄色ブドウ球菌毒素であるリポテイコ酸を添加することでヒストンH3のmRNAの発現量を増加させるとともに、タンパク質レベルで細胞質に発現することを見出した。②では、着色性の化学物資により生きた大腸菌を標識し可視化することに成功したことから、昨年度の成果として発表したウシガエル由来抗菌ペプチドであるCatesbeianalectinを例に、ペプチドのもつ大腸菌凝集作用の簡便な検出法を確立した。③では、これまで Rana okinavanaとして奄美大島産と沖縄諸島産で同一種扱いされていたリュウキュウアカガエルが、2011年にそれぞれアマミアカガエル(Rana kobai),リュウキュウアカガエル(Rana ulma)と別種扱いとなったことから、これまで抗菌ペプチドの単離や遺伝子クローニングの報告のないRana ulmaについて、その皮膚から複数種類の抗菌ペプチド前駆体のcDNAクローンを得た。また,トノサマガエル皮膚に由来する培養細胞LAH-2からも複数種類の抗菌ペプチド前駆体cDNAクローンを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒストンという真核細胞全般に普遍的に存在するタンパク質が生体防御ペプチドとしても機能することに対し、その発現制御機構の解析に使用できる培養細胞系を見つけ出すことができ、研究が大きく前進した。また、リュウキュウアカガエルや両生類の培養細胞から複数の新規抗菌ペプチド様遺伝子を単離することもでき、研究結果も着々と増え、学会発表レベルでは積極的に公表できている。当初計画どおりに順調に研究は進展しているといえるが,これらの成果を学術論文として執筆していないことから、このような自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年4月より、代表者の所属する研究施設において、BSL2の病原体の使用が可能な実験室が増え、さらにこれまでに大腸菌および黄色ブドウ球菌に対してのみ行っていた抗菌活性の検証が、カンジダ菌、セレウス菌、ミュータンス菌、アエロゲネス菌、緑嚢菌、腸炎菌に対しても実施できることとなった(所属機関承認済み)。そこで、これらの菌に対する新規の両生類抗菌ペプチドならびにヒストンの抗菌活性の測定と作用機序の解明を中心とした研究を推進していく。特に、グラム陰性菌である大腸菌に対しては膜透過性を示したのちに抗菌性を発揮するヒストンH2Bについて、上記のうちのグラム陰性菌に対して同様の効果を示すか、また真菌に対してはどうかを調べる。また、細菌毒素に対するヒストンH3の発現とToll様受容体や炎症性の転写因子であるNF-κBの動態を、皮脂腺培養細胞を用いて検証する。成果を学術論文として発表するとともに、これまでの結果と知見をまとめ、総説の執筆を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度(平成26年度)4月よりバイオセーフティレベル2(BSL2)の病原体の使用が可能となる実験施設が増えることが平成25年度末近くに確定した。そのため、使用許可開始直後に実験ができるよう、病原体や試薬、専用器具の購入の時期をずらした。また、国際学会での発表を予定していたが、参加可能な時期の開催ではなかったため、当該年度での参加を見送ったため。 BSL2病原体の培養に使用する器具や試薬の購入、ならびに国際学会への参加費をそのまま差額として次年度計画にスライドさせる。その他,当初予定分については、試薬・合成ペプチド、抗体、実験用プラスチックならびにガラス器具などの消耗品やデータ整理等研究補助者に対する謝金、塩基配列の解析、投稿用論文や学会発表用ポスターの英文校正などの費用とする。
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