研究課題/領域番号 |
24570083
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
吉野 正巳 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (20175681)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Patch clamp / Ion channel / Kenyon cell / Associative learning / Mushroom body / Insect / Brain |
研究概要 |
研究成果: 一酸化窒素(NO)の下流に存在するシグナル伝達経路を以下に示すシグナル伝達の特異的拮抗剤を用いて明らかにした。 ●NO供与剤であるGSNO及びSNAPはNa+活性化K+チャネルを抑制、Ca2+チャネルを増強した。●可溶性グアニル酸シクラーゼ阻害剤ODQはNOのNa+活性化K+チャネル抑制作用を抑制した。●膜透過型cGMPである8-BromcGMPはNa+活性化K+チャネルを抑制した。●cGMP依存性プロテインカイネース(PKG)抑制剤KT5823はNOのNa+活性化K+チャネル抑制作用を抑制した。 さらに以下の特異的阻害剤を用いてNO上流域にアセチルコリン(ACh)受容体の存在する可能性を示唆することができた。 ●ACh作用は非特異的ムスカリン性ACh受容体阻害剤アトロピン、M1ムスカリン性ACh受容体阻害剤ピレンゼピンにより抑制され、M3ムスカリン性ACh受容体阻害剤4-DAMPによっては影響を受けなかった。●ACh作用はフォスフォリパーゼC(PLC)阻害剤U73122により抑制された。●ACh作用はカルモジュリン阻害剤W7により抑制された。W5は効果がなかった。●ACh作用は一酸化窒素合成酵素阻害剤L-NAMEにより抑制された。●GABAB受容体が、Na活性化Kチャネル及びCa活性化Kチャネルと機能的カップリングしていることを発見した。 以上の結果は、NOの上流と下流に位置するシグナル伝達経路に関する仮説が正しいものであることを裏付けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NOの下流と上流に存在するシグナル伝達経路をシグナル伝達特異的拮抗剤を用いて明らかにすることを24年度の目標とした。 ●NO作用に対する可溶性グアニル酸シクラーゼ阻害剤ODQの阻害効果。●膜透過型cGMPである8-BromcGMPの作用。●NO作用に対するcGMP依存性プロテインカイネース(PKG)抑制剤KT5823の効果。●ACh作用に対する非特異的ムスカリン性ACh受容体阻害剤アトロピン、M1ムスカリン性ACh受容体阻害剤ピレンゼピン、M3ムスカリン性ACh受容体阻害剤4-DAMP、ニコチン性ACh受容体阻害剤αブンガロトキシン、メカミラミン、ヘキサメソニウムの効果。●ACh作用に対するフォスフォリパーゼC(PLC)阻害剤U73122の効果。●ACh作用に対するIP3受容体阻害剤ゼストスポンジン及び2-APBの作用。●ACh作用に対するカルモジュリン阻害剤W7及び W5の効果。●ACh作用に対する一酸化窒素合成酵素阻害剤L-NAMEの効果。 これらの企画実験のうち約8割は達成でき一定の成果を得ることができた。よって概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究 24年度の研究成果は主にNa活性化Kチャネルを中心として得られたものである。アセチルコリン受容体下流のシグナル伝達経路によるイオンチャネル修飾の一般性を知るため、さらにCa活性化Kチャネル、電位依存性Caチャネル、TTX感受性持続性Naチャネルについて調べる必要がある。また25年度研究目標とした、TTX感受性持続性Naチャネル電流の性質解明も同時平行的に進め、論文にしたい。またフタホシコオロギにおいて短期記憶から長期記憶への成立過程において、メカミラミン感受性のニコチン性アセチルコリン受容体の関与が行動薬理学の研究から示唆されており、アセチルコリン受容体については、ムスカリン受容体だけでなくミカミラミン感受性のアセチルコリン受容体の関与があることを明らかにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
使用計画 本研究に用いる手法は電気生理学(パッチクランプ法)と薬理学である。電気生理学実験の為の主要機器は、既に用意されている。一方、薬理学実験においては、シグナル伝達特異的阻害剤を頻繁に用いるが、高額のものがほとんどである。従って、データの再現性を得るため、相当数の実験例数、使用細胞例数が求められ試薬品に多くの予算が使われる。そのため25年度以降の研究では試薬品が大きいウエイトを占めることになる。
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