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2013 年度 実施状況報告書

昆虫の連合学習に果たす一酸化窒素シグナル伝達系の分子基盤の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24570083
研究機関東京学芸大学

研究代表者

吉野 正巳  東京学芸大学, 教育学部, 教授 (20175681)

キーワードPatch clamp / Ion channel / Mushroom body / Kenyon cell / Brain / Olfactory learning / Insect
研究概要

今年度は、昆虫の記憶中枢であるキノコ体の内在ニューロンであるケニオン細胞膜上にユニークな性質を持つ電位依存性Naチャネルを同定し、その電気生理学的及び薬理学的性質を明らかにした。遅速2種のNa電流はそれぞれTTX、リルゾールに対する薬物感受性を異にしていること、遅いNa電流の活性化閾値は速いNa電流のそれよりマイナス側にシフトしていることが明らかにされた。これらのNa電流に対し、一酸化窒素(NO)はいずれの電流も増加することが明らかにされた。さらにNa電流の膜興奮性に対する機能的役割を電流固定下に記録した自発性及び誘発性活動電位に対する作用から調査し以下の結果を得た。
(1)脱分極性電流注入により誘発された活動電位は10nM TTX下で、閾値以下の振動電位となった。この振動電位は1μMTTX、持続性Na電流をブロックすると考えられるCd投与、外液NaのCholine置換により消失した(2)振動電位はNa活性化Kチャネルブロッカーのキニジンにより消失した(3)振動電位は膜が-60mV以下の深い膜電位領域でも出現し、TTX1μMで消失する(4)膜電位振動現象は100μMリルゾールによっても出現した(5)自発性活動電位の頻度はCdにより低下した(6)誘発性活動電位の活動電位幅は外液をCa-freeに、またCaチャネルブロッカーのベラパミル投与により延長し、いわゆるプラトー型の活動電位の出現頻度が増大した。(7)このプラトー型活動電位の出現頻度は、持続性Na電流ブロッカーとしてのCdにより低下した。
以上の結果から、持続性Na電流はケニオン細胞の膜電位振動の発生、自発性活動電位の閾値下からの立ち上げ、プラトー型活動電位の形成に関与する可能性が示唆された。これまで同定した各種イオンチャネルに対するNOの作用から、NOはケニオン細胞の膜興奮性のレベルを高めることが判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

前年度は、ケニオン細胞に同定したNa活性化Kチャネルに焦点を絞りこのチャネルを抑制的に制御する一酸化窒素(NO)の作用とNOの下流と上流に渡るシグナル伝達を網羅的に調査した。NO上流のM1ムスカリン受容体、メカミラミン感受性ニコチン性アセチルコリン受容体、そして下流のcGMP/PKGシグナル伝達系の作用を明らかにした。
本年度はケニオン細胞の膜興奮性に決定的に重要な役割を果たす電位依存性Naチャネルを同定しその電気薬理学的特徴を明らかにした。またNOの作用が特定できたことから、(2)の評価が妥当と考得られる。

今後の研究の推進方策

24年度はNa活性化Kチャネル、25年度は電位依存性Naチャネルを中心に成果を得た。今後はさらに電位依存性Caチャネル及びBKチャネルについて明らかにする必要がある。また本研究の経過から、NaチャネルとNa活性化Kチャネルとの機能連関、CaチャネルとBKチャネルの機能連関を示唆する知見を得たことから、今後異種イオンチャネル間の複合体の持つ性質を明らかにする必要がある。NOシグナル伝達系によるケニオン細胞膜の興奮性作用と短期ー長期記憶変換過程との関係性を明らかにしていく必要がある。

次年度の研究費の使用計画

本研究では電気生理学と薬理学的手法を用いている。シナプス伝達特異的阻害剤、イオンチャネル特異的な薬剤は高価なものが多く、予算オーバーにならないよう控えめに使用したため。
主にシナプス伝達阻害剤、イオンチャネル特異的阻害剤の購入に用いる。薬理作用の再現性を確かめ、論文掲載するため必要な薬理実験のデータ取得例数を増やすことが目的である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Properties of persistent Na current in Kenyon cells isolated from the mushroom body of the insect brain.2014

    • 著者名/発表者名
      Masami Yoshino
    • 雑誌名

      The Journal of Physiological Sciences Proceedings of the 91st Annual Meeting

      巻: 64 ページ: S124

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A novel-GABAergic action mediated by functional copling between GABAB-like receptor and two different high-conductance K+ channels in cricket Kenyon cells.2013

    • 著者名/発表者名
      Atsunao Nakamura and Masami Yoshino
    • 雑誌名

      Journal of Neurophysiology

      巻: 109 ページ: 1735-1745

    • DOI

      10.1152/jn.00915.2012.

    • 査読あり
  • [学会発表] 昆虫の記憶中枢ニューロンに見いだされた持続性Na電流の性質2014

    • 著者名/発表者名
      吉野正巳
    • 学会等名
      日本生理学会
    • 発表場所
      鹿児島大学郡元キャンパス
    • 年月日
      20140316-20140318
  • [学会発表] コオロギのケニオン細胞に見られるNOシグナル伝達系の膜興奮性変容作用2013

    • 著者名/発表者名
      吉野正巳
    • 学会等名
      日本動物学会
    • 発表場所
      岡山大学津島キャンパス
    • 年月日
      20130926-20130928

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公開日: 2015-05-28  

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