研究課題
フタホシコオロギの嗅覚連合学習において、短期記憶から長期記憶の形成過程に一酸化窒素(NO)/環状GMP(cGMP)シグナル伝達系が重要な役割を果たすことが報告されている。本年度は、細胞内の調節因子の流出が起きない、Cell-attached patch clamp 法とβエスチンを用いた穿孔パッチクランプ法を大型ケニオン細胞に適用した。その結果、NOの上流に代謝型アセチルコリン受容体の活性化、それに続く一酸化窒素合成酵素(NOS)の活性化があり、さらにNOの下流にcGMP/PKG活性化によるイオンチャネルのリン酸化修飾(BKチャネル、電位依存性Caチャネル、一過性及び持続性Naチャネルの増強、Na活性化Kチャネルの抑制)があること、NOは条件刺激(匂い情報)の媒介神経伝達物質であるアセチルコリン(ACh)と同様に、ケニオン細胞の自発性活動電位及び誘発性活動電位の発火頻度と発火数の増強作用のあることを明らかにした。本研究の過程でBKチャネルは電位依存性L型Caチャネルを介するCa流入によって活性化され、両者に機能連関のあることが判明した。さらにNa活性化KチャネルはTTX感受性持続性Naチャネルを介するNa流入により活性化され、両者に機能連関のあることが明らかにされた。NOはCaチャネルを活性化し間接的にBK電流を増大し、Naチャネルの電位依存性不活性化を軽減すること、またNOは持続性Na電流を増強する一方、Na活性化Kチャネルを抑制し、両者をアンカップルすることで膜の持続的脱分極を誘因する可能性が示唆された。以上の結果から、NOはケニオン細胞の各種イオンチャネルに協調的に作用して膜の興奮性を上昇させる正の興奮性メデイエイターとして作用し、活動電位発生能力を高めることで、出力ニューロンとのシナプス伝達効率をSTDP(スパイクタイミング依存性シナプス可塑性)機構を介して増強し、長期記憶形成に関与する可能性を示唆することができた。
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Journal of Insect Physiology
巻: 78 ページ: 26-32
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