羽化後、求蜜未経験のナミアゲハに青・緑・黄・赤の色円板を見せると多くの個体が青に降りて蜜を探す。この生得的な色の好みに、植物の匂いがどのように影響するかを調べた。メスは食草があると緑、特定の花の匂いがあると赤を好む個体が増えた。ところが、匂いを嗅げなくしたメスは青を好んだ。一方、オスはいずれの匂いがあっても青を好む個体が多かった。以上は、脳で嗅覚と視覚情報が統合されること、嗅覚系を含む神経系に雌雄差があることを示している。情報の統合には視覚と嗅覚が入力するキノコ体と呼ばれる領域が、色嗜好性の雌雄差にはメスの第一次嗅覚中枢をつくる60の糸球体のうち大きく発達した3個が関係すると考えている。
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