研究課題
基盤研究(C)
本研究は組織学的な手法による室傍器官‐生殖腺系が脊椎動物において普遍的に存在するかどうかの検証、電気生理学的手法により室傍器官の光受容能及び光周性との関連の証明といった3つ実験系からなる。組織学的な実験においては、光周性が知られているサケ科アマゴにおいて、カナヘビやウズラと同様に室傍器官とGnRHニューロン及びGnIHニューロンの関連が示唆された。また、幼若個体に比べ、成熟個体の方がGnRHニューロンはもちろんであるが、GnIHニューロンも発達していた。また、無顎類ヤツメウナギではLPXRFアミドは存在せず、別のRFアミドであるPQRFアミドが存在することが知られているが、ヤツメウナギ室傍器官においてはPQRFアミドニューロンを介して下垂体との神経連絡が存在することが示された。また、一部のPQRFアミドニューロンは副松果体にも投射していることが明らかとなった。しかしながら、松果体への投射に認められなかった。電気生理学的実験においては主に新規の実験系の組立に時間を費やした。ヤツメウナギ及びカナヘビの室傍器官からの光応答の細胞内記録を試みたが、現段階では光応答の記録には成功していない。この実験から作業効率の上でマニピュレーターに問題があることが判明し、この機器を更新した。平成24年度後半にはLED光刺激装置(別の予算で購入)の設置を行った。光周性に関しては赤、緑、青のLED照明装置による飼育環境を作製し、カナヘビを短日/長日条件で飼育したが、生殖腺への影響を現在のところ明らかではない。平成24年度は組織学的な実験では申請時に予定していたよりも多くの研究成果が得られた。また電気生理学的は研究においては予定されていたように平成24年度でほぼ実験系が完成した。しかしながら、光周期の違いによる生殖腺の発達度合を観察する実験において現段階では明瞭な変化は見られていない。
2: おおむね順調に進展している
電気生理学的研究は申請時より平成24年度には光刺激装置等の設備の設置を行い、3年計画で目標達成を目指しており、予定通り設置を完了し、実験は開始した。まだ細胞内記録に成功していないが、問題点も明らかとなり、その対策もすでに対応済みである。また、組織学的研究ではキンギョとヤツメウナギについて調べることになっていたが、将来的な発展性を考え、キンギョではなく、メダカを調べることにした。さらに光周性が知られているアマゴも当初の予定よりも実施を早めた。ヤツメウナギでは概要で述べたように予定よりも多くの新たに知見が得られた。また、個体への光周期の影響を調べる実験ではスナヤツメおよびメダカ、カナヘビを短日および長日条件での飼育が可能な設備を作製した。これによって、飼育は可能になっているが、室傍器官への影響や生殖腺への影響はまだ確認できるところまでは進んでいない。組織学的研究は予定以上の成果が得られており、電気生理学的実験はほぼ予定どおりである。それ故、全体的には「おおむね順調に進展している」と判断した。
組織学的実験:平成24の成果は主にカワヤツメ成体によるものである。平成25年度は光周性の実験との関連からも様々なステージの幼生と成体が入手可能なスナヤツメにおける室組織学的実験:平成24年度の成果は主にカワヤツメ成体によるものである。平成25年度は光周性の実験との関連からも様々なステージの幼生と成体が入手可能なスナヤツメにおける室傍器官とPQRFアミド及び下垂体、さらには松果体複合体との関連ついて調べる。加えて、飼育方法が確立しているメダカを用いる。そこで、スナヤツメ及びメダカの室傍器官とそれぞれの動物種のRFアミドニューロンとの関連を調べる。アマゴに関しては長期間の飼育が研究室の施設では困難であることから、幼若個体と成熟個体の比較をさらに調べていく。電気生理学的実験に関しては、平成24年度設置した光刺激装置やマニピュレーションシステムを用いて、引き続きヤツメウナギとカナヘビについて調べていく(細胞内記録にこだわらず申請時には3年目に予定している細胞外記録についても平成25年度末には開始する)。光周性に関してはスナヤツメ幼生(大型)において、変態への影響を調べる。成体に関しては生殖腺の発達または放卵/放精への影響について調べる。同時に光周期が室傍器官‐生殖腺系に変化を及ぼすかどうか調べる。メダカを生殖腺への影響と室傍器官の変化について調べる。飼育環境を整備するためにインキュベーターを購入する。電気生理学的実験に関しては実験を行いながら潅流装置等の設置などの改良を加えていく。
個体への光周期の影響を調べるための飼育環境を整備するためにインキュベーターを購入する。電気生理学的実験に関して、機器類は平成24年度購入したものや既存の機器でほぼ準備ができている。今後は実験を行いながら、現在必要と考えられる潅流装置の設置を検討する。さらに組織学的研究において、脊椎動物における室傍器官の下垂体への作用にRFアミドニューロンの関与および室傍器官の光受容能を明らかにするために、市販の一次抗体を用いることも検討する。そのためRFアミドやG蛋白質、オプシンなどの抗体を購入する。
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