研究課題/領域番号 |
24570087
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
鈴木 知彦 高知大学, 教育研究部自然科学系, 教授 (60145109)
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キーワード | 繊毛運動 / アルギニンキナーゼ / ミリストイル化 / 無細胞タンパク質合成 |
研究概要 |
テトラヒメナ(Tetrarhymena pyriformis)には単量体のAK(AK1)と2ドメイン型のAK(AK2)の両方が存在しており,AK1は主に繊毛に,AK2は細胞質に局在することが分かっている.両者は繊毛運動のエネルギー供給に深く関与している.また, AK1はN末端にミリストイル化シグナル配列を持つことから,ミリストイル化されている可能性が高い.昨年度我々はミリストイル化を触媒する酵素,テトラヒメナのミリストイルトランスフェラーゼ(NMT)遺伝子のmRNA配列を決定し,そのリコンビナント酵素を大腸菌内で発現させた.今年度は,先ず,NMTの酵素パラメータを正確に求めた.テトラヒメナNMTの酵素濃度を14μMとし,反応に関わる2基質の内ミリストイルCoAの濃度を250μMに保ち,もう一方の基質(テトラヒメナAK1のN末端の7アミノ酸からなるペプチド:純度80%以上の合成ペプチド)の濃度を5-2000μMの範囲で変動させて酵素活性を測定した.その結果は,ミカエリスメンテンの酵素反応式に正確に従っていた.シグマプロットを用いてペプチドに対する見かけのKmを50μMであると決定した.尚,上記で用いたペプチドのN末端のGlyを削除したものに対しては,テトラヒメナNMTは一切活性を示さなかった.これらの結果は,テトラヒメナAK1のN末端Glyがミリストイル化され得ることを証明するものである. 次に,昆虫細胞由来の無細胞タンパク質合成系を用いて,ミリストイル化されたAK1を直接合成することを試みた.先ず,大腸菌発現用のAK1のコドンをそのまま用いmRNAを合成した(C末にStrepタグを付加).次に,無細胞系でAK1を合成し付加されたStrepタグを用いて精製した.SDS電気泳動で合成されたAK1を確認したところ,わずかであるが相当する位置にバンドが見られた.しかしまだ十分な量とはいえないので,今後発現量を増加させる条件を検討していく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
テトラヒメナから単離したN-ミリストイルトランスフェラーゼ(NMT)のcDNAを用いて,テトラヒメナの繊毛に局在するアルギニンキナーゼ(AK1)のN末端に由来するペプチドがミリストイル化されることが証明されたことで,提案した研究の最も重要なポイントがクリアされたと考えられる.また,無細胞タンパク質合成系が働くことが分かり,細胞内でAK1がミリストイル化される直接証明の目処がついた.以上の理由から計画以上に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,AK1の酵素によるミリストイル化を更に補強するための研究(無細胞タンパク質合成系を用いたミリストイル化されたAK1の証明)に力を注ぐ予定である.具体的には,昆虫発現用に最適化したAK1のcDNAを再合成することで,無細胞タンパク質合成系で最適に働くmRNAが合成でき,結果的に大量のAK1が合成されると期待できる.
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次年度の研究費の使用計画 |
AK1のミリストイル化に関して,N-ミリストイルトランスフェラーゼを使った酵素学的な検証を優先させたため,無細胞タンパク質合成系による検証に使用すべき予算に残額を生じた. 今年度は,無細胞タンパク質合成系を用いたin vivoを模した状態でAK1のミリストイル化を実証していく予定であるので,これに残予算を使用する.
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