研究課題/領域番号 |
24570088
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
岡田 二郎 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (10284481)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アクティブ・センス / 空間認知 / 昆虫 / アンテナ / 触覚 / 体移動 |
研究実績の概要 |
本研究は、昆虫のアンテナ能動触覚系とそれに密接に関わる体移動系の神経機構および両者の相互作用について、生理実験により解明することを目的とする。平成26年度は、前年度と同様の実験を繰り返すことでサンプル数を増やし、全体的な傾向を把握することをめざした。 アンテナ触覚系が機能的に保存されているゴキブリ単離中枢標本を用いて、アンテナ鞭節表面への接触刺激に対する応答を2種類のアンテナ運動神経(柄節外転神経および柄節内転神経)から細胞外記録した。既にアンテナ運動系を活性化させることが分かっているピロカルピンを灌流投与し、鞭節に対して各種方向から接触刺激を行い、両神経の応答を比較した。 ピロカルピン投与前の静止状態におけるアンテナ運動神経の刺激応答では、鞭節の接触方向に応じた質的相違が多くのサンプルで認められた。この応答様式は、鞭節に物体が接触すると、物体からアンテナを離脱させる方向に動かす回避反応を示唆し、実際の動物のアンテナでも頻繁に観察される現象であった。引き続きピロカルピンを投与することでアンテナ運動神経にリズミックなバースト活動を惹起し、鞭節への接触刺激を与えた。アンテナ運動神経のバースト活動は、スパイク頻度が比較的高いアクティブフェーズと、スパイク頻度が比較的低い非アクティブフェーズを繰り返すが、約半数のサンプルにおいて、フェーズ依存的な刺激応答が観察された。すなわち仮想上のアンテナ運動方向と対面するように物体が鞭節に接触すると回避反応が起こり、追随するように物体が接触するとアンテナを物体に押し付ける抵抗反応が起こると推測された。これらの現象は実際の動物がアンテナ探査をおこなう際、頻繁に見られるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成26年度の実施体制としては、代表者と学部4年生1名が実験に当たり、パートタイマーとして雇用した博士後期課程大学院生1名が実験とデータ解析の補助に当たる予定であった。しかし諸事情により学部4年生が平成26年序盤から本研究に従事できなくなり、以降実験を担当するのは基本的に代表者のみとなった。このため研究計画に全体的遅延が生じ、研究期間を1年間延長することになった(学振承認済)。
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今後の研究の推進方策 |
最終となる平成27年度は、当初予定していた研究協力者(学部4年生ないし博士前期課程大学院生)が不在のため、代表者のみで実施することになる。まず前年度まで未着手の実験、すなわちアンテナ能動触覚に関連する背側葉ニューロン、およびアンテナ能動触覚系と歩行運動系の相互作用を表徴する脳ニューロンの検索に着手する。続いてin vivo 実験系を用いたアンテナ能動触覚系および歩行運動系の神経機構の解析に着手する。申請時に計画した、行動―神経計測システムを用いた自由歩行実験については、残された時間の関係から実施を見送る。以前代表者らがおこなったコオロギでの研究結果によれば、自由歩行実験から得られるであろう知見は、基本的にin vivo拘束歩行実験で得られるものと大きく変わらないと予想している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、当初予定していた研究協力者が研究に参画できなくなり、研究計画に遅れが生じたため、残額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
直接経費のおおよその使途と金額については以下のように計画している(カッコ内は主な内訳)。消耗品費35万円(試薬、実験器具、実験用部材)、旅費30万円(学会等における成果発表)、その他6万円(雑誌投稿料等)
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