研究実績の概要 |
最終となる平成27年度は、当初予定していた研究協力者を得ることができず、代表者のみで実施することになった。当初以下3つを本年度の目標として掲げた:1)未着手のアンテナ能動触覚に関連する背側葉ニューロンの検索、2)アンテナ能動触覚系と歩行運動系の相互作用を表徴する脳ニューロンの検索、3)in vivo 実験系を用いたアンテナ能動触覚系および歩行運動系の神経機構の解析。 ところで、かつて平成25, 26年度の成果として得られた、アンテナ運動神経の触覚応答は、3種類あるアンテナ運動筋(外転筋、内転筋、挙筋)のうち、外転筋と内転筋の運動神経を対象としていた。神経応答から実際のアンテナの挙動を推定するには、3種類すべての運動神経から記録することが必須であり、未着手の重要課題として残されていた。また以前から用いてきたアンテナ触覚刺激装置はマニピュレーターの自由度が低く位置決めが煩雑であり、かつ精度的な問題も抱えていた。 以上の経緯から、本年度は動作自由度と操作精度を向上させた触覚刺激装置を新たに製作し、これを用いてアンテナに対して4方向(吻側、尾側、背側、腹側)から刺激を与え、3種類すべてのアンテナ運動神経の刺激応答を細胞外同時記録することから始めた。本年度終了までに、新たなアンテナ刺激装置が完成し、これを用いて薬理的に活性化した3つのアンテナ運動神経から刺激応答を数例得ることに成功した。しかし統計的な解析が可能なサンプル数には至らないまま研究期間終了を迎えた。 本年度は主に研究手法の見直しに留まったが、これは今後の本研究の進展に不可避の過程であり、相応の成果と考えられた。
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