研究課題/領域番号 |
24570089
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
濱田 俊 福岡女子大学, 人間環境学部, 教授 (60282349)
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研究分担者 |
濱田 香世子 福岡女子大学, 人間環境学部, 研究員 (20448814)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 神経科学 / 散在神経系 / 刺胞動物 / 神経回路形成 / シナプス / 国際情報交換 / ドイツ / 神経環 |
研究概要 |
ヒドラなどの刺胞動物でみられる神経環(nerve ring)は、系統発生的に最古の神経回路と考えられる。神経環の神経系進化における位置づけを明確にするために、ヒドラ神経環に発現する遺伝子の同定・機能解析を行なっている。本年度は、以下の研究を行った。 1)HySynの局在様式の検討:これまでの我々の研究で神経環に発現することが明らかになったHydra synapsin (HySyn)について、免疫電子顕微鏡法によりHySynたんぱく質の局在を検討した。その結果、synaptic boutonと思われる部分で、大型有芯小胞が集積している部分に一致して発現が認められた。この結果は、HySynが大型有芯小胞の集中化に必要であることを示し、シナプス伝達もしくは神経分泌の制御に重要であることを示唆している。 2)ネマトステラsynapsin(NvSyn)の発現解析:他の刺胞動物のsynapsinについても解析を行うため、NvSyn synapsinに対するin situハイブリダイゼーション法を行った。触手や口丘周囲にシグナルがみられたが、シグナルは弱く分布様式の決定には、さらなる検討が必要と思われる。 3)トランスジェニック・ヒドラの作成:HySyn-GFP融合タンパク質を神経細胞に過剰発現するトランスジェニック・ヒドラを作成した。また、RNAiトランスジェニック・ヒドラについては、ベクターを作成し、共同研究者に送り、トランスジェニック・ヒドラの作成を依頼した。 4)Synapsin以外の神経環発現遺伝子の同定と機能解析:これまでにdifferential cloning法により得られている神経環発現候補遺伝子のデータを解析・整理し、同一遺伝子に由来するクローンの整理を行い、in situハイブリダイゼーション法を行うために必要なRNAプローブの作成を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)「Hydra Synapsin (HySyn)の局在様式の検討」については、免疫電子顕微鏡法によりHySynの局在を明らかにすることができたものの、HySynの有無がシナプスの構造とどのような関係にあるのか検討できていない。 2)「ネマトステラsynapsin(NvSyn)の発現解析」では、in situハイブリダイゼーション法により、おおよその発現パターンは明らかになったが、まだ確定的な結果は得られていない。現在、NvSynに対して抗体作成を並行して行なっており、免疫染色による局在解析を行う予定である。 3)「トランスジェニック・ヒドラの作成」は、概ね当初の計画通りに進んでおり、今年度中にはHySyn-GFP融合タンパク質を発現するトランスジェニック・ヒドラを用いた機能解析を行うことができると思われる。 4)「Synapsin以外の神経環発現遺伝子の同定と機能解析」については、当初より24年度はHySynの解析に重点をおくことになっており、今年度は塩基配列データの整理とプローブ合成の準備のみを実施した。 まとめると、1)、2)は計画より遅れており、一方、3)、4)は予定通りであり、総合的には「やや遅れている」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
1)Hydra Synapsin (HySyn)の局在様式の検討: 前年度に行った酵素抗体法による包埋前免疫電子顕微鏡法による観察を継続すると共に、既にHySynが存在しないことがわかっているGLWamide陽性神経細胞やpeduncleのRFamide陽性神経細胞で免疫電子顕微鏡法を用い、シナプスの構造を観察し、HySynを発現する神経細胞のシナプスと構造を比較し、HySynの有無がシナプスの構造にどのような役割を有するのか考察する。 2)ネマトステラsynapsin (NvSyn)の発現解析: NvSynのcDNAに対し、新たに複数のプローブを作成してin situハイブリダイゼーション法を行う。また、24年度に作成した抗体を用い、NvSynたんぱく質の局在解析を行う。 3)トランスジェニック・ヒドラの作成と解析: 前年度に作成されたHySyn-GFP融合タンパク質を神経細胞で発現するトランスジェニック・ヒドラを用いた機能解析を行う。まずトランスジェニック・ヒドラの繁殖と選抜を行い、体ほぼ全域の神経細胞でtransgeneを発現する動物を得る。その後、HySyn-GFPタンパク質の細胞内局在様式を検討するとともに、シナプス構造への影響を検討する。また、行動への影響、特に餌や物理的刺激に対する行動への影響を検討する。さらにシナプス可塑性の評価のため、物理的刺激に対する順応についても検討する。RNAi型トランスジェニック・ヒドラについても作成を進める。 4)Synapsin以外の神経環発現遺伝子の同定と機能解析: 当初の計画通り、これまでに得られた神経環発現候補遺伝子に対し、できるだけ多数のものについてin situハイブリダイゼーション法による発現解析を行い、神経環に発現する遺伝子を同定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度の設備備品費として、実体顕微鏡用蛍光観察ユニットを計上していたが、大学の研究費から一部充当できたこと、また4)の「Synapsin以外の神経環発現遺伝子の同定と機能解析」で行う予定だった発現解析が遅れているため、in situハイブリダイゼーション法に使う試薬等消耗品代が25年度分へと持ち越しになった。この分は、4)の発現解析の消耗品購入および実験補助に充てる予定である。
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