研究課題
刺胞動物の神経環は、系統発生的に最古の神経回路のひとつと考えられている。本研究では、ヒドラ神経環に発現する遺伝子を同定し、その機能を調べることにより、神経回路の進化に関する手がかりを得ることを目的とした。研究開始時、既に神経環に発現することを突き止めていたシナプスタンパク質synapsinに関しては、1)遺伝子改変ヒドラを用いた機能の検討、2)他のモデル刺胞動物であるネマトステラ(花虫類)でのsynapsinの局在について解析を行った。また、3)synapsin以外の神経環発現遺伝子の探索を行った。1)蛍光たんぱく質で標識したsynapsinを異所性に発現する遺伝子改変ヒドラ2系統と、synapsinの発現を抑制する遺伝子改変ヒドラを作成した。26年度の解析で、本来synapsinを発現しない神経細胞にsynapsinを強制的に発現させると神経突起の形態が変化し、より大型でより多くの瘤状構造(シナプス小胞が集積する領域)を形成することが示唆された。2)ネマトステラのsynapsinに対して抗体作成を行った。作成した抗体を用いた免疫染色により、ネマトステラ散在神経系におけるsynapsinの局在を調べた。その結果、口周囲など一部の神経細胞のみsynapsinを発現するという、ヒドラと類似した発現パターンがネマトステラでも認められた。1)と2)の結果から、散在神経系の一部(神経環や口周囲など)の神経細胞はsynapsinを発現し、シナプスの機能が他の神経細胞とは異なっていることが示唆された。3)神経環の存在する頭部に発現する遺伝子の候補として540遺伝子の相補的DNAを得たが、このうち約360遺伝子に対してin situハイブリダイゼーション法による発現解析を行った(H26年度は155遺伝子について実施)。今後、神経環近傍に発現している遺伝子について機能解析を進める。
すべて 2015 その他
すべて 学会発表 (2件) 備考 (1件)
http://www.fwu.ac.jp/wp/hamada/