研究課題/領域番号 |
24570090
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研究機関 | 芦屋大学 |
研究代表者 |
渡 康彦 芦屋大学, 教育学部, 教授 (80240539)
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研究分担者 |
田中 一裕 宮城学院女子大学, 学芸学部, 教授 (00316415)
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キーワード | タマネギバエ / 羽化 / 温度較差 / 概日時計 |
研究概要 |
タマネギバエは地下2~20cmで蛹化し、温度変化に同調した概日時計によって早朝に羽化時刻を設定し、温度の日較差が小さいとき羽化時刻を早めることで、土深に伴う温度変化の遅れに対応している。羽化時刻が1日の温度較差によって変わるしくみはどのようなものであろうか?そこで、温度変化のサイクルから25℃一定に移した蛹を、さまざまな時刻で12時間だけ26℃または29℃の高温、24℃または21℃の低温へさらし、羽化時刻がどのように変わるかを調べた。結果をもとに位相反応曲線(PRC)を描いたところ、概日時計には、高温に反応して羽化時刻を遅らせる位相と早める位相があり、それらはそれぞれ低温に反応して羽化時刻を早める位相と遅らせる位相でもあることがわかった。自然界の毎日の高温と低温は、羽化時刻が遅れるように時計の位相に当たり、温度変化量が大きいほどより効果的なようである。そのため、結果として1日の温度較差が大きいときよりも小さいときに羽化時刻が早まると考えられた。 パルスの強さ(変化量または期間)によってPRCのタイプが変わることが知られている。そこで、2℃較差の正弦波状温度サイクル(最高26℃最低24℃)を与えてから25℃でフリーランさせ、さまざまな時刻で12時間のパルス(26℃または29℃の高温、24℃または21℃の低温、680ルクスの光)を与えた。結果をもとにPRCを描いたところ、26℃と24℃のパルスではタイプ1の、29℃と21℃、そして光パルスではタイプ0のPRCが得られた。次に、フリーラン前の正弦波状温度変化の振幅を20℃(最高35℃最低15℃)とし、フリーラン後12時間のパルス(29℃、21℃、光)を与えた。得られたPRCはタイプ1に分類されるものだった。つまり、2℃較差からフリーランさせた場合はタイプ0の位相反応を引き起こす刺激は、20℃較差からフリーランさせた場合はタイプ1の反応しか引き起こさなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は以下の4つである。 ① タマネギバエの羽化リズムの位相決定における温度レベルと温度較差の相対的重要性を明らかにする。② 温度較差が時計遺伝子の 発現に及ぼす影響を明らかにする。③ タマネギバエの羽化時計における2振動体モデルの検証を行う。④ 温度較差を測定する時刻補正機構を行う部位を明らかにする。 以上の研究目的のうち、①から③の研究を24年度に推進する計画であった。①に関しては研究実績の概要で示した通りである。②に関しては現在進行中であり、26年度には成果が出る予定である。③に関しては、科研費によるNKsystem低温恒温器が26年度中にさらに1台追加されるので、実験を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である、「① タマネギバエの羽化リズムの位相決定における温度レベルと温度較差の相対的重要性を明らかにする。②温度較差が時計遺伝子の発現に及ぼす影響を明らかにする。③ タマネギバエの羽化時計における2振動体モデルの検証を行う。④ 温 度較差を測定する時刻補正機構を行う部位を明らかにする。」の①と②を継続して行い、同時に③と④の研究も行っていく
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度3台購入したNKsystem低温恒温器(LP-130-ESP-SS)を更に1台追加購入するため。 本研究の目的「① タマネギバエの羽化リズムの位相決定における温度レベルと温度較差の相対的重要性を明らかにする。② 温度較差が時計遺伝子の発現に及ぼす影響を明らかにする。③ タマネギバエの羽化時計における2振動体モデルの検証を行う。④ 温度較差を測定する時刻補正機構を行う部位を明らかにする。」の①〜③の達成のために使用する。
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